お金の数え方

妻(yuheimama)です。夏休みから徐々に進めているお金学習。「これは難しいかな」というところを難なくクリアしたと思ったら、「これが分かるなら、これも分かるだろう」という私の先入観を打ち破って、思わぬところでつまずいたりしています。

夏休み以降、複数個の10円玉を数えたり、1円玉を混ぜて2桁の金額を数えることができるようになりました。次のステップで私が難しいのではと予想したのは、1円玉5枚と5円玉、10円玉5枚と50円硬貨、100円玉5枚と500円硬貨の対応です。そこで、次のような課題を作ってみたところ、予想に反してクリア! これで、数えられるバリエーションが増えました。

次に100円玉が入った3桁のお金。スタートは順調だったのですが、思わぬところでつまずきました。500円硬貨から数え始めれば、すんなり数えられるのですが、100円玉から数え始めると500円硬貨を加算することができずに固まってしまうのです。
こちらはOK    こちらはNG

「え! ここでつまづいちゃうの? 500円硬貨から数え始めればいいのに」と思ったものの、その思考の柔軟性が持てないのが自閉症なのでしょう。お金のおもちゃを用いて、500円硬貨が先頭にくるように、悠平の目の前で並び替えてみました。悠平は「そうだったのか」という感じでにっこり笑い、正解することができました。以降、「500円から数え始めればいいね」と声を掛けると、戸惑いながらも数えられるようになりました。

また、1円玉、10円玉、100円玉が混ざった金額を答える問題では、あらかじめ3桁のマス目を書いておくと、正解することができました。算数では今、繰り上がりの足し算が難航していて、3桁の数字の操作は未履修。とはいえ、数百円単位の金額は、コンビニやスーパーなどの買い物で頻繁に目にするからか、悠平にも馴染みがあったようです。ちょっとしたヒントで答えられました。

お金の学習は将来を考えたとき、悠平の生活の自由度、自立度を左右する課題です。大きな金額は要支援でも、スーパーやコンビニでの買い物ができるようになればと願いつつ、これからも取り組んでいきたいと思います。 

思い出し笑い

妻(yuheimama)です。先日、悠平の授業参観に行ってきました。参観したのは体育と国語・算数です。

以前、体育を参観した際には、授業の最中に「お母さ〜ん、僕、頑張ってるよ〜!」と母に向かって呼びかけてきた悠平ですが、今年は授業に集中。時に真剣に、時に笑顔で取り組んでいる様子を見て、成長を感じました。

国語・算数の授業の前に廊下の掲示物に目をやると、書き初めが張り出されていました。昨年は書き初めに「にく」と書いて笑わせてくれましたが(「好きな○○」を参照ください)、今年の作品には「おおいがわ」「アプト」と書かれていました。冬休みにyuheipapaと日帰り旅行した、SLやアプト式機関車が走る静岡県大井川鉄道が余程楽しかったようです。

教室では、国語・算数を参観しました。算数のプリントに取り組んでいたときのこと、悠平、急に笑い出しました。思い出し笑いのようです。先生に「何がおかしいの?」と聞かれると、「大丈夫です」と返答。それでもまた笑い出してしまいました。すかさず先生が「笑わないでください」。でも悠平、またも「うふふふ」。この様子を見て思ったのは、思い出し笑いとはいえ、場をわきまえずに笑うと周囲に不快感を与えたり、失礼になる場合があるということです。家庭で思い出し笑いをしたときには、何がおかしいのだろうと、こちらも一緒になって笑っていたのですが、迂闊でした。

翌日、連絡帳にこのことを書くと、先生から「思い出し笑いだけではなく、自信がなかったり、不安なときにもあのような笑い方をすることがあります」という指摘がありました。yuheipapaにこのことを話すと、悠平は不安なときなどに別のことを考えて気を紛らわせようとすることがあるので、一種の自己防衛による思い出し笑いかもしれないという見解。確かにその可能性もあるなぁと思いつつ、場にそぐわない笑いをどう指導していったらいいものやら…。学校と相談しながら、方策を考えていこうと思いました。

こだわり2種をクリア!

妻(yuheimama)です。生活習慣と乗り物へのこだわりが殊に強い悠平。こだわりを崩すには年単位での働きかけが必要ですが、この冬、手強かったこだわり2種類をクリアすることができました。

一つは、放課後等デイサービスの送迎車に自宅から乗れるようになることです。悠平ルールでは、放課後デイの送迎車に乗るのは「学校―デイ/デイ―自宅」と決まっていて、休日や長期休暇などに朝、自宅に迎えに来てもらう車には乗ることができませんでした。これまで何度も働きかけてきましたが「イヤ!」と、一蹴。結局、通所することを優先して、私が歩いて送っていました(「さぁ、夏休み――こだわりの放課後等デイサービス」を参照ください)。前回の夏休み以降、デイのスタッフさん、学校の担任からも声がけを続けていただき、ついに冬休み前、デイのスタッフさんと冬休みにトライすることを「男同士の約束」。数日前から、緊張のせいか指と指をこすり合わせる常同行動が見られましたが、当日は「僕が自分で車のドアを開けて乗る」と、自分なりの儀式(?)を考え出して、その通り乗車することができました。その後、常同行動は収まり、春休みにも頑張ると約束することができるようになりました。デイに通所し始めて丸2年、サポートいただいた皆さんに感謝です。

もう一つは、スクールバスの乗車位置こだわりです。悠平はスクールバスに乗る時、いつも同じ場所で乗らないとパニックを起こしていました。路上駐車している車の関係で、乗車位置がずれると絶叫! 体が小さい時にはなんとか抱え上げていたのですが、ここ最近は身長体重共に私に迫って来ていて、もう抱き上げることはできません。結局、乗れずに学校を休んでしまったこともありました。それが先日、道路工事で乗車位置が大幅にずれてしまい、私は冷や汗。悠平に「場所が違っても乗れる?」と聞くと、悠平は不安げながらも「乗れる」と小声で返答。いよいよバスが近づいてくると、バスに向かって「ここで止まってくださーい!」と手を振っているではありませんか! おぉと驚く私には目もくれず、バスのドアに向かって走り出して、スムーズに乗車することができました。乗車位置がすれることは、そう度々あるわけではありませんが、小学校入学以来、4年目の快挙にちょっと放心状態になった母でした。

こだわりは、一つ消えてはまた現れると言いますが、日常生活を滞らせかねないこだわりはクリアできるに越したことはありません。「悠平よく頑張ったね」と褒めつつ、「あぁ、助かった〜」と母は心の中で深く深くつぶやきました。

冬休みのOTにて

妻(yuheimama)です。新学期が始まって早1週間。ようやくいつものペースが戻ってきました。今回は冬休みに行ったクリニックでのOT(作業療法)での出来事を紹介します。

その日は、夏休み以来約5か月ぶりのOT(作業療法)でした。病院に向かう途中、悠平は「(担当の)I先生に、大井川鉄道に乗りましたって言う」と宣言。冬休み中にyuheipapaと乗り鉄した、SLが走る静岡県大井川鉄道へ行ったことがとても楽しかったようです。自分の気持ちや体験を相手に伝えることはいいことなのですが、相手がそれを聞いて分かるかどうか、相手の状況を想像できないのが自閉症ならではです。そこで私から悠平に質問。「I先生、大井川鉄道のこと知っているかな?」――悠平はちょっと考えて「知らないと思うよ」と返答。そこで、「じゃあ、先生に大井川鉄道のこと、説明してあげなくちゃ。大井川鉄道はどこを走ってるの?」と尋ねると、「静岡県!」と答えました。さて、悠平は先生に説明できるでしょうか?

新年のあいさつをして悠平と先生が療育ルームに入ると、ドアの近くに座っていた私の元に二人のやりとりが聞こえてきました。悠平は「先生、僕、大井川鉄道に行きました」――あぁ、やっぱりストレートに言っちゃったか…と残念に思った私。でも、先生が「大井川鉄道? うーん、聞いたことがあるような…」と返答すると、悠平は「静岡県にあるんだよ」と補足説明。先生が「そっかぁ、そっかぁ。静岡なんだ〜」と会話が成り立ちました。

photo by Yuhei

状況にお構いなしに自分の言いたいことをぶつけてしまうのは自閉症の障害特性なので、そう簡単に変わるとは思えません。これまでも唐突に話し掛け、相手を驚かせたり、戸惑わせてしまうことがたびたびありました(「どうにも止まらない」を参照ください)。それでも、言いたいことの前後に何かしら説明を加えると、相手に話が通りやすくなります。ST(言語)で積み重ねてきた説明力を日常会話でも生かせるよう、これからもサポートしていこうと思いました。

さて、肝心のOTの評価です。体のバランス感覚が向上し、課題への取り組みにもだいぶ柔軟性が見られるようになってきたとのうれしい評価。夏休みには手首の動きが硬いと言われていたのですが、学校にその評価を伝え、日常の療育に組み込んでいただいた成果か、手首の動きもよくなってきているとのこと。今後、肩甲骨周りの筋肉をつける運動を意識して取り入れていけば、腕全体がしっかりして、手の動きもより向上が望めるだろうとのアドバイスをいただきました。

冬休み明け、これらの評価を学校に伝えました。3学期も、病院・療育―学校―家庭の連携をはかりながら、悠平の成長を後押ししていきたいと思います。

本年もよろしくお願いいたします

yuheipapaです。
新しい年を迎えました。本年もよろしくお願いいたします。

昨年は神奈川県相模原市の障害者施設殺傷事件があり、この社会で障害者、とりわけ知的障害を持つ人が生きていくことについて、この社会に根強く優生思想があることについて、いろいろなことを考えました。私自身は30年以上、マスメディアに関わって生きてきましたが、とりわけ、マスメディアは障害者をどのように伝えてきていたのかと、考える日々が続いています。何より、障害についての正確な知識と、障害者が生きている実情が社会に広く知られることが必要なのだと思います。
昨年は五輪イヤーでもあり、パラリンピックも開催されました。開催地のリオデジャネイロでは街のバリアフリー化が進み、市民の共生意識も深まったとのリポートをメディアではよく目にしました。2020年は東京で五輪、パラリンピックが開かれます。メディアの障害者の伝え方に課題は残っているとしても、社会の関心が高まる機会であることは間違いがありません。一歩ずつでも、私たちの社会が良い方向に進んでほしいと思います。

親子3人で迎えた穏やかな年明けでした。悠平もいつの間にか10歳。身長は間もなくyuheimamaを超えそうです。
2日は3人で東京の下町、江東区清澄庭園へ獅子舞を見に行き、その後、私と悠平は深川七福神を巡りました。3年前、大阪から東京に戻って最初の年明け以来、獅子舞プラス七福神巡りはすっかり恒例行事です。


昨年、坂東三十三観音霊場を巡り終えた「乗り鉄と巡礼」は秩父三十四観音霊場に移り、間もなく半分に達するところです。最近は悠平も、私が読み上げるのを耳で少し覚えた「般若心経」を、一緒に声に出したりしています。
私と悠平の外出は、今までは、主に悠平が出不精にならないようにするためと、なるべく歩いて悠平の体力作りに役立てるため、そしてyuheimamaの休息の時間を作ることが目的でした。加えて、少年期を迎えた悠平に家の中と外の違いを意識させる機会とし、外での振る舞いのトレーニングになるようにしていきたいと思います。

悠平語録2016

妻(yuheimama)です。今年も残りわずかとなりました。毎年恒例というわけではありませんが、今年印象に残った悠平語録を紹介します。

・ある日、私がキッチンで作業をしていたときのこと。リビングに置きっぱなしにしておいたCDを見た悠平が尋ねてきました。「お母さん、これ、やじんのCD?」ーーえっ、野人? 私の頭にはサッカーの元日本代表、野人と呼ばれていた岡野選手の顔が浮かびましたが、もちろん岡野選手のことではありません。うーんと考えると合点がいきました。置いていたのは八神純子(やがみじゅんこ)さんのCD。駅名や地名で漢字を覚えている悠平にとって、八神の神は明治神宮前の「じん」なのです。「それはやがみって読むんだよ」と笑いをこらえながら教える私に対し、悠平は真顔で「ふーん」。音読み・訓読み、少しずつ学習していかなくてはなりません。

・弱い雨が降っていた朝のこと。傘を差してスクールバスの乗り場に向かって歩いていると、悠平が「こあめだね〜」と一言。小雨を「こさめ」ではなく、「こあめ」と覚えていたようです。とても微笑ましくて、「小さい雨って書いてこさめって言うんだよ」と教えながら、歩きました。最近、ようやく「こさめ」と言えるようになりました。

・先日、yuheipapaが知人から手みやげにお煎餅をいただいて帰宅しました。悠平はそのお煎餅が大好きです。そこで一言、「このお煎餅、僕の名物!」。うーん、惜しい! 名物ではなくて、好物です。聞き間違えて覚えていたのでしょう。それでも、自分の持っている語彙で一生懸命表現しようとしている姿が、親バカですが、なんともかわいく思えました。

学生時代、英語の練習をするときに「間違えてもいいから、とにかく話して」とよく言われたものです。来年もおもしろかわいい間違えをフォローしながら、悠平の語彙力・表現力が広がっていくことを願います。

本年も当ブログを読んでいただき、ありがとうございました。皆さま、良いお年をお迎えください。

2016年の療育・学習を振り返るーー「反応」と「思考」

妻(yuheimama)です。冬休みに入り、いきなり風邪を引いてしまった悠平。外出を控えたことによって、録画していたアニメ映画を見まくり、パソコンを思う存分やることができて、それはそれで幸せそうなクリスマス三連休を過ごしました。

一方、私はこの時期になると、誰に言われるわけでもなく、1年の出来事を振り返るのが常。悠平の療育・学習を振り返ってみました。今年のキーワードは「反応」と「思考」です。

悠平に限らず自閉症児者は、好き・嫌い、やる・やらない、と何事においても二項対立的な反応をしがちです。さらにいったん反応すると、それに固執して、方針変更が受け入れられなかったりパニックを起こしてしまいます。私としては、それが障害特性だからと苦い思いで受け入れつつも、反応する前に一呼吸置いて考えられるようになれば、本人のキャパシティが広がるのにと常々口惜しく思っていました。

この夏、クリニックでOT(作業療法)を受けた後の講評で、「新しい課題を出したとき、以前は難しいと思ったらすぐに『先生やって』と言っていたのが、今回は自分であれこれやってみようとする姿勢が見られました。自分で考えられるようになると、伸びますよ」と言われました。この評価は、私が考えていたことと表裏一体だと思いました。

ではどうやって思考力を伸ばしていくか。学校では3年生のときから、先生に怒られた際、時間を設けてなぜ怒られたのかを自分で考えるよう指導していただいており、この指導法は家庭でも取り入れています。そしてもう一つ、私が着目しているのが算数です。長い時間をかけてついに10までの足し算を暗算できるようになった悠平ですが、式と答えを暗記しているわけではなく、毎回、問題を前に考えながら取り組んでいます。

教科学習は、生活に結びつく実学の習得によってQOL(生活の質)を向上させることを目標に据えています。算数であれば、お金の扱い、時計の読み、できれば単位の理解までと考えていますが、その基礎となるのは数字の概念と基礎的な計算です。目的はあくまで実用にありますが、悠平が足し算に取り組む様子を見ていると、それがそのまま思考の訓練になっていると感じます。

この冬休み、そして来年に向け、一題一題に丁寧に取り組みながら、思考の訓練を積んでいきたいと思います。