受け身はイヤ、見たいものを見たいように見る〜鴨川シーワールドで親はがっかり

 先週のゴールデンウイークは、わたしがおおむねカレンダー通りの休みが取れたので、家族3人で千葉県鴨川市に2泊の旅行をしました。もともと悠平が赤ん坊のころから、育児中の気晴らしも兼ねて春や夏には家族旅行をしていました。ただ1泊では慌しく、妻がかえって疲れてしまうため、できるだけ2泊にして全体としてゆったりとした日程を組むようにしています。最近は外出すると悠平がじっとしていることができないため、今回も今まで以上に余裕を持たせた日程にしました。出発は初日の午後。鴨川に着いたらまっすぐ宿へ。2日目を丸1日、鴨川でのんびりと過ごし、3日目は宿からまっすぐ駅に行き、駅弁を買って昼ごろの電車で帰ってきました。

 さて、鴨川を選んだのは、悠平を鴨川シーワールドに連れて行ってやるためでした。昨年の1月、伊豆の稲取温泉に行った際には、伊豆バイオパークでキリンやヒツジにえさのニンジンを与えて大喜びしていたので、それならシャチやイルカ、アシカなんかはどうだろうかと、妻と相談して決めました。ところが結果はと言うと、悠平はまるで関心を示しませんでした。わたしも妻もがっかりです。
 最初に見せたのはイルカのショーです。4頭が見事なコンビネーションで次々にジャンプを見せて、観覧席ではみんな大きな拍手。特に子どもたちは大はしゃぎなのですが、悠平はと言えば、最初こそ一緒に手をたたいたりしていましたが、ものの5分ほどでぐずり始めました。ショーは20分ほどでしたが、じっとしていることができません。わたしと妻に挟まれて座っているベンチで、体をくねらせて何度も「脱走」を試み、そのたびに周囲のお客さんの迷惑になってはと、わたしと妻とで必死に押さえつけていました。
 鴨川シーワールドの目玉はシャチのショーです。観覧席のベンチがいっぱいだったため、立ち見で悠平には肩車をしてやりましたが、まったく関心がないようで視線は別の方向。わたしは最後まで見たかったのですが、早々にその場を離れました。同じようにペンギンもアシカもトドも、大水槽の魚たちにもまったく無関心。ただ、人込みは気にならないどころかむしろ楽しい様子で、ちょっと手を離すと一人でとっとこ駆け出し、慌ててわたしや妻が追いかけることが何度もありました。
 この日の悠平の行動を見て、悠平は自分が興味を持ったものだけを自分のペースで鑑賞しようとすることがよく分かりました。イルカも決して嫌いなのではなく、ベンチに座らされて受け身でショーを見させられることが我慢できない、ということのようです。あくまでも自分が見たいときにだけ見る、ということです。ついでながら、写真を撮るときもそうで、カメラに関心が向いて気になっているときにはカメラのほうを向きますが、関心がないときは全く違う方向を見ています。3日間で撮った写真の中には、わたしや妻は「カメラ目線」でポーズを決めているのに、横にいる悠平はあらぬ方向を向いている、という写真がたくさんあります。
 結局、園内の展示で悠平が唯一、自分から関心を示し、食い入るように見ていたのは水槽を泳いでいるクラゲでした。わたしとしては、ちょっと脱力です。自宅で録画しているNHKの子ども向け番組に、クラゲが30秒間に何回カサを動かすかを数えるシーンがあり、それで実物にも関心を示した、というのが妻の推測です。

 泊まった宿では、悠平は露天風呂が気に入ったようでした。庭園風のつくりになっていて、岩造りの浴槽に漬かるとまるで池の中の鯉か金魚の心境です。ジャグジーもあり、悠平はぶくぶくと出ている泡の感触を楽しんでいました。3日目は朝風呂にも漬かって、もういっぱしの温泉通です。
 おみやげに、シーワールドの売店で木製のジグゾーパズルを買いました。悠平はイラストが気に入ったのか、わたしが「イワトビペンギン」とか「オウサマペンギン」と一つひとつ指差して名前を読んでやると、一緒に指を当てて自分でも「イワトビペンギン」「オーサマペンギン」と口にします。パズルにはまだ挑戦していませんが、自閉の子どもは観念的な思考が苦手な分、視覚にすぐれていることがままあり、ジグゾーパズルもピースを裏返しにして絵柄が分からない状態で、一つひとつのピースの形状だけをもとに完成させてしまう子もいるといいます。さて、悠平はどうなのか。いずれはピース裏返しにも挑戦させてみたいと思います。ちょっと楽しみです。

【参考】
鴨川シーワールド
http://www.kamogawa-seaworld.jp/index.html

伊豆アニマルキングダム(旧伊豆バイオパーク)
http://www.izu-kamori.jp/izu-biopark/index.html
※昨年1月当時はライオンやトラはいませんでした。リニューアルのようです。