地域で生きる―自閉症のギタリストのライブに行って

 妻(yuheimama)です。奇しくも発達障害啓発週間最終日の4月8日(日)に、幼稚園の先輩ママさんに誘っていただき、大阪府高槻市在住の自閉症のギタリスト・布施和生さんのライブに行ってきました。布施さんは、先輩ママのご主人の同級生。私とも同世代です。ライブは2部構成で、第1部が布施さんのステージでした。クラシックギターの演奏にはじまり、オリジナル曲の演奏&歌唱、会場の観客と一体になった「ドレミの歌」などの大合唱で盛り上がりました。
 演奏したクラシックの曲では、非常に早く細かい指の動きが要求されます。自閉症者には手先が不器用な方が多いようですが、そんなことを感じさせない演奏でした。ものすごい練習量をこなされたのではないかと思い、布施さんのひたむきさをひしひしと感じました。
 オリジナル曲「ねえ お母さん あのね」「ぼくはユニークだね」は、タイトル通りにお母様への愛情にあふれた、楽しくユニークな歌でした。歌詞はお母様が布施さんの口癖や話し言葉をノートに書き留め、そこから創りあげたとのこと。お母様の布施さんへの愛情の深さをずっしりと感じさせてくれました。
 後半ではヘルパーの方がギター演奏をして、布施さんは歌を披露されました。ヘルパーさんによると、布施さんはかつて楽しい歌を歌うときでも腕を前に組んで、仁王立ちをして歌っていたので、踊りをつけることにしたそうです。どのような振り付けにしようかと考えていた時に、お母様から布施さんは子どものころから髭ダンスが好きだったと聞き、それを取り入れることに。曲が始まると、生真面目な表情のまま、手をペンギンの羽のようにして、リズムに合わせて上下させ始めました。無垢な歌声と髭ダンスが妙にマッチして、とっても楽しいステージになりました。
 今回のライブは、多国籍料理店という趣のある食堂(飲み屋さん?)で行われました。客席は満員御礼状態。布施さん以外の出演者の方にも、観客の中にも何らかの障害をお持ちの方々が多数いらっしゃって、それが当たり前という雰囲気でした。布施さんもお母様も、私を誘ってくださった先輩ママのご主人を今も「○○君」と呼んでいらっしゃいます。皆、この町で生まれ育ち、生きているんだなぁと強く感じました。
 翻って私はというと、転勤族の娘で生まれた場所の記憶もなければ、小中高校とすべて違う都県で育ちました。大学入学以降は今回大阪に転居するまでずっと東京暮らしでしたが、都内ではご近所とあいさつはしてもそれ以上の交流はなく、地域社会には全くもって疎かったと言わざるを得ません。悠平も5歳にして引っ越しを2回経験しています。こればかりは転勤族の宿命なので、その土地土地でネットワークを作っていくようにするしかないのですが、いずれは悠平の就労や支援態勢を考慮して、生活拠点を定めなくてはと主人と話しています。今回のライブは「地域で生きる」ということをあらためて考える機会を与えてくれました。布施さんをはじめ、ライブにかかわった方々と、先輩ママご夫妻に感謝です!
※布施さんのホームページでは、一部演奏を聴くことができます
「布施和生のホームページ」http://homepage3.nifty.com/starbird/

自閉症者のギター

自閉症者のギター