久しぶりのブックレビュー(2)――読書週間に寄せて

妻(yuheimama)です。今回は、特別支援学校とはどのような学校なのか、特別支援教育とは具体的にどういった教育なのかを綴った本を2冊、紹介します。

まずは、成沢真介『虹の生徒たち 自閉症発達障害がある子どもたちを育てる 特別支援学校とは?』(講談社)です。著者は、中学の普通学級や特別支援学級の教諭を経て、特別支援学校の教諭になった方です。

序章で、特別支援学校とはどんなところで、どのような学習をするのかをイラスト入りで紹介しています。本論では「生活習慣を身につける」「トラブルを回避する」「気持ちを伝えあう」という3点を柱に、具体的な現場での取り組みが語られています(ただし、プライバシーへの配慮から仮名を使用し、エピソードにも変更が加えられているとのことです)。著者はあとがきで「この本を読んで、少しでも多くの人が自閉症発達障害についての理解を深めてくれることを願いつつ〜」(同書p245)と記していますが、私がこの本を一読して思ったのは、それと同様に「就学に際して、支援学校について知りたいと思った親御さんへの格好の入門書になるのではないか」ということでした。就学先を既に決められた方も、これからの方も、特別支援学校に感心がある方にお勧めしたい1冊です。

続いては、伊藤寛晃『翔和学園 "生きる気力を育てる″発達障害教育』(明治図書出版)です。タイトルになっている翔和学園とは、東京都内にあるNPO法人が運営する特別支援教育機関です。小中学部、高等部、大学部、就労移行支援事業所まであります。学園ホームページよると、著者は現在、学園長を務められています。

翔和学園―“生きる気力を育てる”発達障害教育

翔和学園―“生きる気力を育てる”発達障害教育

私はとあるきっかけでこの学園のことを知り、「特別支援学校の大学部とは?」と興味を持って読み始めました。大学という名称からアカデミックなイメージを思い浮かべたのですが、読み始めたらちょっとと言おうか、だいぶ異なった展開が待っていました。発達障害への無知や誤解によって傷つき、追い込まれ、不登校や引きこもりを体験したり、問題行動を起こすようになった生徒たちの姿と、そうした生徒たちをまずは受け入れて、生きる気力を育てていこうと格闘する教師たちの取り組みが記されていました。大学部については、「高校を卒業してすぐに就職することは別に悪いことではない。」としつつ、高卒後の数年間で学生たちが劇的に成長してきた大学部での教育の経験から「多くの若者が大学を出て二二歳前後で就職する中、なぜ障害者就労は高卒が一般的なのか。(中略)機械的な作業トレーニングやソーシャルスキルなどにより一般的な大学生たちよりも早く「大人の要素」を詰め込むことが効果的な教育だとは決して思えない。」(同書pp.45−46)というくだりがあり、「支援学校高等部卒業→就労」と固定的に考えていた私には、パッと視界が開けたように感じられました。

また、「障害者を無知の犯罪者にしてはならない」という項では、現実問題として「発達障害について理解し、それを持つ子どもへの対応がうまくなるということは、世間一般の人たちの感覚と自分の感覚がズレていくということでもある」(同書p106)とし、障害児者の言動が「あやしい」「こわい」「むかつく」などと誤解される危険性を指摘しています。実際に痴漢や万引きと間違えられた実例とその際の対応も書かれており、「微笑ましいけど、そのまま大人になったら危なっかしい」息子を持つ身としては、参考になりました。

最初から最後まで、多くのエピソードとそれらに対する考え方や取り組みがてんこ盛りで、非常に刺激を受けました。一点だけ要望があるとすれば、著者が学んだといい、その著作をたびたび引用している向山洋一さんという方について、氏を知らない読者には唐突感があるので紹介文を付けてほしかった点です。向山氏は「教育技術法則化運動(TOSS)」代表で著作も多数あるので、特に教育関係者の方々には知られた方なのだと思いますが、一般の読者には馴染みが薄いのではと思いました。

久しぶりのブックレビュー、いかがでしたでしょうか。これからも少しずつ勉強しながら、悠平とともに歩んでいきたいと思います。