自閉の本丸ーー世界自閉症啓発デーに寄せて

妻(yuheimama)です。今年も世界自閉症啓発デーを迎えました。毎日、一緒に暮らしていても、なかなか手強い自閉症。そんな自閉症について、少しでも理解が進むことを願って、これからも自分たちにできる範囲ではありますが、情報発信を続けていきたいと思っています。

先月、クリニックではST(言語)が終了し、学校では3年生最後の個人面談がありました。今回はそこで話題になった3点を紹介したいと思います。

【心の理論】
「心の理論」もしくは「サリー・アン課題」という用語、自閉症のお子さんをお持ちの親御さんなら一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。課題内容は、以下の通りです。
(1)サリーはかごを持っていて、アンは箱を持っています。
(2)サリーはボールを持っていて、自分のかごに入れます。
(3)サリーが出かけた間に、アンがボールを自分の箱に移します。
(4)サリーが戻ってきたときに、サリーが最初にボールを探すのはどこでしょう?
※ボールは、課題によってビー玉だったり飴だったりするようです。
正解は、サリーはアンがボールを移したことを知らないので、自分が入れたはずの「かご」の中を探す、です。この課題を出されたとき、話の内容を理解した人は、ボールが箱に入っていることを知っているわけですが、サリーはそれを知らないはずです。ですから、正答するには、自分の考えと他者の考えは違うということを理解することが必要になります。自閉症ではこの「心の理論」の獲得に困難があります。

悠平も、「どうにもとまらない」で紹介したように、私が何をしていようがお構いなしに自分とのやりとりを求めてきたり、相手の都合を考えて対処するということがまだできません。3月の段階ではこの課題をクリアできませんでした。「心の理論」を獲得すると、ルールが分かるようになり、問題行動が減る場合が多いといいます。自閉症の障害特性を象徴するような課題だけに、将来的にクリアできるか、支援策を探っていきたいと思います。

【因果関係】
自閉症児者は、物事の因果関係、特に原因を遡って考えることが苦手です(「悠平、因果関係を語る」を参照ください)。悠平は、怒られるとすぐに「ごめんなさい」と謝ります。でも、「何がいけなかったの?」と怒られた原因を尋ねると「分からない」と答えます。どうも怒られている雰囲気を察して謝るものの、何がいけなかったのかは分かっていない様子。これでは、次につながりません。そこで、学校でも家でも怒られた原因を時間をかけて話し合うようにしています。健常児であれば、見つかったら怒られると思いつついたずらをすることがあるのでしょうが、そこが自閉症児とは決定的に違うところ。時間をかけて、因果関係を自分で考えるよう促していきたいと思っています。

【柔軟性】
昨年から少しずつ、パニックをコントロールできるようになってきた悠平(「パニック・コントロール」を参照ください)。親の方も、パニックを起こさないように予防する知恵がついてきました。しかし、いつでもどこでも予防できるとは限りません。学校から、今後の課題は、大人によって整えられた環境だけでなく、あらゆる状況を自力で乗り越える経験を積むことであるといわれています。これには父母共々、納得。これができれば、悠平が一人で行動できる幅がぐっと広がるのではないかと思います。

これまでは、目の前のこだわりやパニックにどう対処していくかにエネルギーを傾けてきたように思いますが、高学年に向けて、ついに自閉症の自閉たる所以、「自閉の本丸」に挑むときが来たようです。特効薬はありませんが、方向性を誤らないように考えながら、日々の体験を積んでいきたいと思います(注.「自閉の本丸」はyuheimamaの造語です、念のため)。