ひとり言と共生社会

 妻(yuheimama)です。悠平はしばしばひとり言を発します。一種の常同行動なのか、ファンタジーへの没入なのか分かりませんが、自閉症の障害特性の一つであることは違いないと思います。家庭内でブツブツ言っている分には、「また始まった」と思うだけなのですが、これが一歩外へ出ると状況が変わってきます。

 先日、路線バスのバス停でバスを待っていたときのこと。悠平のひとり言が始まりました。すると、悠平の前に並んでいた方が「ん?」という、やや不審そうな表情で振り返りました。私はあわてて「悠君、外では静かに」と注意をしました。私自身はすっかり慣れてしまった悠平の障害特性ですが、社会の中では浮いてしまうことにあらためてハッとさせられました。

 またある日、私がスーパーに向かって歩いていると、後ろから低い声でひとり言を言っている男性の存在に気づきました。自閉症を知らなかった時期に体験していたら、「変な人、危ない人」と感じていたかもしれませんが、今の私は「たぶん、自閉の人なのね」と思いました。その男性は私を追い越して歩いて行ったのですが、見ると、以前に何度も見かけたことのある特別支援学校高等部の男の子でした。

 そんなことが何度かあって、私は考えてしまいました。悠平が外出先でひとり言をやめられればそれに越したことはないけれど、ひとり言を言っている人がいても、不気味がらずに「あら、自閉症の人なのかしら」とスルーできる方が増えれば、本人も付き添いも、ちょっと気が楽になるかも…と。ひとり言といった些細な行為の捉え方も、「多様性の尊重」「共生社会の実現」につながっているような気がしています。