生活の構造化〜視覚で理解させる工夫

 発達障害児の療育に関連して「生活の構造化」という言葉を知りました。発達障害児は耳から言葉で聞いて観念的に理解するのが困難なため、日常の生活でなすべきことを要素別にいったん分解し、視覚的に理解できるよう再構成すること、と言えばいいでしょうか。以前のエントリーでも紹介した「悠平カード」も、外出の際などにどういう順番でどこに行くのかを視覚的に理解させるのが目的です。きょう、悠平と妻と3人で散歩を兼ねて昼食と買い物に出かけた際、カードで説明しないまま家を出ました。「お出かけだよ」「散歩に行こうね」と妻と何度も声をかけ、悠平もうれしそうにしていたので、わたしたちにも油断があったかもしれません。家を出た途端、悠平は大好きなタクシーに乗るつもりだったのか、手を引いて先に行こうとするわたしたちに泣いて抵抗、路上に仰向けになってちょっとしたパニックを起こしました。事前にカードで行動を説明したときとでは、悠平の反応に明らかに違いがあります。わたしたち夫婦にも少しずつですが「生活の構造化」の意味とコツのようなものが分かってきた気がします。
 先日は妻が学習机の周りを片付け、悠平の勉強スペースを作りました。イスに座って目につく範囲に悠平の気が散るようなものは置かず、隣りの本棚にも布をかけて並んでいる本が見えないようにしました。悠平はわたしや妻の本も気になるようで、特に新書のカバーを片っ端から外すのが大好きだからです。そうやって作った勉強スペースで、短い時間ながら悠平をきちんとイスに座らせ、妻も横で折りたたみイスに座り、お絵かきやカードを使ったあいさつの練習などをさせます。うまくできたら小型のカレンダーのその日のところに「ごほうび」としてシールを貼ります。「この机に座ったら勉強する」という生活の構造化の試みのひとつです。始めてまだ数日で、悠平の集中力が持つのも10分足らずがせいぜいのようですが、少しずつでも時間を延ばしてみるつもりです。
 手を焼いていることの一つは食事です。悠平はスプーンとフォークを使えないわけではないのですが、好きなものは早く食べたいのか、から揚げなどは最初から手づかみ。ご飯も最初のひと口ふた口ぐらいはスプーンを使うのですが、やがて手づかみ。味噌汁の具もおわんに手を突っ込んでつかみます。横につきっきりで、手づかみしようとするその都度、スプーンやフォークを持ち直させれば、とくに抵抗するわけでもないのですが。何か視覚的に理解させる手はないものか。食事のうまい「構造化」はできないか、思案中です。
 同じように難題なのがトイレ。今も悠平はオムツが取れません。おしっこをすると、ニコニコしながら自分でズボンごとオムツを脱いでしまいます。たぶん、本人はそれですっきりして気持ちがいいのでしょう。きゃっきゃとはしゃいで、下半身裸で駆け回ります。おしっこならまだいいのですが、これがウンチとなると後始末が大変です。悠平がズボンを脱ぎ始めるのにいかに早く気づくかが明暗を分けることになります。トイレには子ども用の補助便座も用意してありますが、まだ一度もおしっこやウンチで使ったことがありません。悠平を座らせると決して嫌がることもなく、むしろ喜んでトイレットペーパーをちぎり、股間を拭く仕草をした上、ご丁寧に水まで流して「バイバイ」をするのですが、すべて真似事です。何とか、便意を感じた時点で声にでも出してくれれば、と思うのですが、気がつくと下半身丸出しで部屋中を飛び回っていたりします。毎日決まった時間に便座に座らせてみる、というやり方を試してみようか、と妻は話しています。


 さて、きょうの夕食もわたしが作ったから揚げでした。鶏のモモ肉と豚のヒレ肉と小エビに、つけ合わせとしてニンジンにカレー風味を付けてチップス風に揚げてみました。悠平は鶏と豚はよく食べましたが、エビは衣を少しかじっただけ。「だめもと」で出したニンジンでしたが、意外なことによく食べました。ささやかながら偏食改善へまた一歩前進です。