鉄道博物館に父子で小旅行

 16日の日曜日、悠平を連れて2人でさいたま市鉄道博物館に行ってきました。本格的に蒸し暑い時期が来るのに備え、自宅のエアコンのクリーニングを頼んだので妻は留守番でした。いつもなら、近所の散歩でも妻が一緒に来ないと泣き出す悠平ですが、今回は事前に鉄道博物館のホームページを見せ、何度も「きょうはお父さんと電車でお出かけだ。たくさん電車に乗るよ」と話し掛けたためか、電車が大好きな悠平は機嫌良く家を出ました。
 最近では「テツ」とか「鉄ちゃん」と呼ばれるマニアの間では名高い鉄道博物館ですが、わたしも少年時代は今で言う「撮り鉄」でした。小学校高学年から中学校時代、ちょうど蒸気機関車(SL)が各地で引退しつつあったころで、当時住んでいた北九州市近辺で消えゆくSLを追っ掛けていました。実はわたし自身、鉄道博物館行きは念願でした。今回は写真を交えたリポートです。

 渋谷からJR湘南新宿ラインに乗り換え大宮で下車。新幹線の横をゴトゴト走るマッチ箱のようなニューシャトルに乗り一駅で鉄道博物館駅です。自宅からは1時間半ぐらい、ちょっとした小旅行です。入館料は大人は1000円、幼児でも3歳以上は200円と有料なのにちょっと驚きました。
 ※鉄道博物館ホームページ
 http://www.railway-museum.jp/

 手持ちのICカード乗車券(JR東日本のSUICA、首都圏の共通カードPASMOなど)を券売機で登録し、駅の自動改札と同じように改札機にかざして入場。悠平には別にカードが貸し出されます。入場してすぐ右手には明治期以降の機関車や客車、電車の実物を並べた博物館の目玉の「ヒストリー・ゾーン」があるのですが、悠平がわたしの手を引きながら走って向かった先は、何と逆方向にあるミュージアム・ショップ。店に入るや、ずんずんと奥に進んで、あっという間に模型のコーナーに行き着きました。
 目下、プラレールと並んで悠平が気に入っている鉄道おもちゃは、金属製のNゲージサイズの「ダイキャスト」シリーズです。
 ※ダイキャストスケールモデルのサイト
 http://www.trane.org/ngauge/index.html

 さすがは鉄道博物館と言うべきか、ほぼ全シリーズがそろっており、悠平は「はんきゅーでんてつ(阪急電鉄)」とか「いせしまらいなー(近鉄伊勢志摩ライナー)」とか言いながら次々に指差します。そのたびにわたしが陳列棚から取ってやるのですが、車体を正面からじっと見て、気に入らないと突き返してきます。わたしが「北斗星のかっこいい機関車もあるよ」と、青い塗装のJR北海道ディーゼル機関車DD51)を見せても、もっぱら電車大好きで機関車にはほとんど関心がない悠平は手で払いのけます。そんなやり取りを繰り返した末に、東京・上野と成田空港を結ぶ京成電鉄のスカイライナーに決まりました。このシリーズの悠平のコレクションはこれで14、5台ぐらいでしょうか。このシリーズはJR東日本の駅売店でも扱っているところが多く、悠平はどの駅でも目ざとく見つけると売店に走っていきます。もともとわたしも嫌いではないので、つい悠平が欲しがるままに買ってしまうことの繰り返しでした。本当は、何か生活習慣を身に着けることができたときなどに、ごほうびとして与えるのがいいのかもしれません。ただ、悠平にはいつも「1台だけだよ」と言っているのですが、一度に2台欲しがることはなく、またレジで支払う間はおとなしく待っています。

 さて、買い物を済ませたところで昼食へ。まだ11時を少し回ったところでしたが、混まないうちに済ませることにしました。以前から鉄道博物館で食事するならここ、と決めていたのがレストラン「日本食堂」。食堂車を運営していた日本食堂のレストランです。わたしが注文したのは博物館限定メニューの「ハチクマライス」(単品で650円、ドリンク付きのセットで800円)、悠平には唐揚げとポテトの盛り合わせ(700円!)を頼みました。悠平にはパンも付けたかったのですが単品はライスしかありませんでした。悠平はスプーン使いも上達してきてはいるのですが、最後は面倒なのか手づかみになってしまいます。外食でライスの場合、手づかみになって全身がご飯粒だらけになりかねず、妻がいなくてわたし一人では完全に持て余すと考えて断念しました。悠平自身はおとなしく唐揚げとポテトをぱくついていました。
 わたしが注文したハチクマライスですが、もともとは寝台列車で車掌や食堂車のスタッフが食べていた賄い食だったそうです。丼めしに福神漬けをまぶし、目玉焼きやハムエッグを載せソースをかけてかき込んだ、という話を何かで読んだことがあります。実は期待していたのですが、この日食べたそれはちょっとがっかり。ご飯に刻みキャベツとコーンが載り温泉玉子が2個。その上にカレーがかかり、福神漬けは横に添えられていました。玉子を崩し全体をかき混ぜて口に運びましたが、やっぱり福神漬けご飯に目玉焼き、カレー抜きで試してみたかったなあ、と思いました。帰宅後、ネットで色々見て分かったのですが、このメニューは博物館のオープン後、何度か中身が変わっているようです。基本はご飯に温泉玉子、刻みキャベツとコーンと福神漬け。あるときはハンバーグ、別のときは唐揚げが載っていたりで、今はカレーがかかっているようです。ちなみにウイキペディアによると「ハチクマ」の名の由来は、落語の八っつあん、熊さんでも手軽に簡単に作れてしまうことから。異説としては、かつて実在した乗務員のあだ名から、というのもあるようです。

 食事の後は、館内を見て回りました。まずヒストリー・ゾーンへ。悠平は元気いっぱいで、特急電車や新幹線めがけて駆けていきます。手には先ほど買ったスカイライナー(これは帰りの電車の中まで、ずっと握り締めたままでした)。わたしは古い蒸気機関車や客車、中央の転車台(ターン・テーブル)に乗ったC57蒸気機関車もゆっくり見たかったのですが、悠平が許してくれません。ちょうど正午から転車台を動かしてのC57のデモストレーションが始まりました。わたしと悠平は2階に上がって見ていましたが、実物の汽笛がブオーッと鳴ると、悠平は迫力にちょっと驚いた様子。しかし、やはり機関車には興味が湧かないのか、フロアを走り回っていました。

 ヒストリー・ゾーンから初代東海道新幹線0(ゼロ)系の展示ルームへ。わたしにとっては大学時代、東京〜小倉間を帰省のたびに何度も往復した懐かしい車両です。車内も当時のままの非リクライニングシートが再現されていました。感慨に浸る父をよそに、悠平は悠平で0系はDVDなどで見知ったなじみの電車なのでしょう、きゃっきゃと喜んで、車内の通路を走り回っていました。
 鉄道の歴史を写真パネルや数々の模型などで紹介するコーナー、鉄道模型の大ジオラマなども順に見て回りました。ジオラマはおそらく全国最大規模だと思うのですが、ベンチの観覧席から見る構造になっています。先日の鴨川シーワールドのイルカショーもそうでしたが、こうした受け身のアトラクションは悠平は苦手です。ちょうど部屋に入ったときには、夜行列車の運行を再現中で照明が落ちていたこともあって、わたしも遠めには何がなんだか分かりませんでした。
 屋上に出ると、すぐ隣が東北新幹線や上越新幹線の高架です。各列車の通過予定時刻も掲示。走り去って行く新幹線を見ながら悠平も「こまち!」などと興奮気味でした。

 この日、悠平がいちばん嫌がったのがミニ「はやて」が200メートルほどの線路を走る「ミニシャトル」です。悠平も喜ぶかと思って15分ほど並んだのですが、順番が来て指定された車両に悠平を抱えて乗り込んだとたん、泣き出して逃げ出そうとしました。抱っこしてシートに座ると間もなく泣きやみましたが、降りるまでずっと不安そうな顔でした。狭い箱に閉じ込められるのがイヤだったのでしょう。ちょっとかわいそうなことをしたなあと反省しました。
 最後にまたミュージアム・ショップに行き、お土産を買いました。悠平には0系のイラストをプリントしたTシャツ。サイズは妻に電話で相談し、来年も着られるようにと少し大きめの120センチにしました。妻には山手線の電車をかたどった缶に入ったチョコクッキー。空き缶は悠平のおもちゃになりそうです。博物館を出たのは午後3時ごろ。さすがに悠平も疲れたのか、大宮でJRに乗り換えて間もなく、座席に座ったままこっくりこっくりと居眠り。楽しい休日でした。

※最後の写真は、大宮駅で電車を待っていたときに入線してきたEH500電気機関車「金太郎」。わたしが好きな機関車の一つですが、電車専門の悠平はやはり興味がないようでした