「黒ひげ」登場

 前回のエントリー(「親も自分の生き方を考える〜人事異動を機に思うこと」)でお知らせしたとおり、先週の人事異動で新しい職場に移りました。想定外だった臨時の仕事をさっそく振られたりして、あたふたと毎日を過ごしていますが、自宅で過ごせる時間は格段に増えました。仕事が終われば、飲む必要のない(?)酒は飲まずに帰宅しています。悠平は父親のライフサイクルの変化に気付いているのかどうか分かりませんが、起きている時間に帰ってくるのがよほど嬉しいのか、わたしが玄関のカギを開ける音がすると「おとうさ〜ん」と喜んですっ飛んできます。本当に「すっ飛んでくる」という表現がピッタリなくらい、リビングから玄関に飛び出してきて、その場で駆け足をするように飛び跳ねます。最近は多動ぶりが一段と増しているのですが、一方で言葉も増えてきて、ぎこちなくも「お帰りなさい」も言えるようになりました。先週までは、悠平が起きている時間に帰宅することはなかなかなかったので、悠平にしてみれば「お帰りなさい」を口にするシチュエーションがなかったのかもしれません。
 さて、きょう(21日)わたしはシフト勤務で出社が早かった分、夕方には職場を抜けたので、帰りに三軒茶屋で途中下車して西友ストアのおもちゃ売り場に寄りました。目当ては「黒ひげ危機一発」。1499円で買って帰りました。

 悠平は世田谷区総合福祉センター(さくらポート)の療育プログラムの入門編「ひよこグループ」に3回通った後、5月以降は個別指導を受けに月に1〜2回のペースで通っています。先日の療育で、「乗り物カード」「乗り物パズル」などとともにやったのが「黒ひげ危機一発」でした。妻によると、悠平はいたく気に入ったようで大興奮。ドキドキしながら手を口に当てて、黒ひげが飛ぶと大はしゃぎだったようです。悠平の遊びぶりを観察した心理士からは、言葉の理解が進み、色や形の識別もできるものの、手先の動きが弱くてパズルがうまくはめこめなかったり、次のステップを連想する「試行錯誤」ができていないことなどの指摘がありました。「黒ひげ危機一発」は家庭で親が一緒に遊んでやると、交替でやるというルールを守ること、剣の色を口に出して言うこと、細い溝に剣を刺し込む手先の作業があることなどで、楽しみながらのトレーニングになるようです。そうした話を妻から聞いていたので、さっそくわが家に導入しました。
 きょうも玄関にすっ飛んできた悠平に「はい、おみやげだよ」とレジ袋に入った「黒ひげ」の箱を渡しました。自分で取り出すことができない悠平に代わって妻が取り出してやると、箱に印刷された「黒ひげ」の写真を食い入るように見つめます。「わあ悠くん、黒ひげだよ。『ありがとう』でしょ」と妻に促されると、「ありがとう」とひと言。シチュエーションをどこまで理解できているかは分かりませんが、とにもかくにも口にはできました。
 箱を開けてさっそくゲーム開始。妻とわたしと交替で、あるいは3人で、10回以上はやったと思います。見ていると、悠平は剣を溝に刺すところまでは一人でやるのですが、手先の力が弱く奥までしっかり刺し込むところまではできません。わたしや妻が手を添えて刺し込んでやった後、「一人でやってごらん」と言ってやるのですが、わたしや妻の手を引いてやらせようとします。それでも何度も繰り返すうちに、ぎこちない手つきながら4回から5回に1回ぐらいは、自分で刺し込むようになりました。黒ひげが飛ぶと、悠平は大はしゃぎで、すぐに「もいっかい(もう1回)、もいっかい」「さいご、さいご」と次をせがみます。どうも悠平にとって「さいご」はラストではなく「もう1回」と同義のようです。本当にラストの時には「おしまい」と言います。「これで『おしまい』だからね」と言った最後のゲームが終わっても、悠平は「もいっかい」「さいご」とせがんできたのですが、わたしが「もうおしまい。あしたまたやろう」と言って片付け始めると、悠平は泣き出しました。ひとしきり泣いた後は、自分でティッシュを使い涙とよだれをふいて、素直に歯磨き。寝付きもスムーズでした。
 おそらく、明日もわが家では何回となく黒ひげが飛び出すことになるのでしょう。悠平の「もいっかい」とともに。

 ※悠平を寝かし付けているうちに、わたしもつられて寝入ってしまいました。夜中に起き出して入浴後、このエントリーを書きました。アップの時間は未明ですが、無理をして書いているわけではありません。新しい職場に慣れてくれば、このブログの更新頻度も上げられると思います。

【訂正】2010年6月25日7時45分
 商品名のうち「危機一髪」は「危機一発」でした。3カ所訂正しました。