わが家の祇園祭の楽しみ方

 16日の土曜日、悠平と妻と3人で京都の祇園祭を見に行きました。大阪に来て間もなく5カ月になりますが、実は京都に家族3人で遊びに行くのは初めてです。悠平が電車大好きなこともあって、休みの日は半日の日程で、わたしと悠平がJRや阪急電車に乗って大阪市内や京都、神戸、奈良へと出かけることが多かったのですが、目的の一つはその間、妻を悠平の相手から解放して休息させることでした。このところ、特に梅雨明け以降は妻の体調がよく、3人で出かけることにしました。
 有名な祇園祭ですが、実はどんな祭りなのか、具体的な知識はほとんどありませんでした。何事につけ、悠平を連れての外出は事前にリサーチして行動計画を立てておくことが重要です。ネットで調べたり、職場で詳しい人に教えてもらったりで、祇園祭について(1)祭りは7月いっぱい1カ月間続くが、ハイライトは32基の山と鉾が街中に立ち並びライトアップされる16日の「宵山」と、山と鉾が京都市の中心部を巡行する翌17日の「山鉾巡行」(2)宵山山鉾巡行ともに、押し合いへしあいの大混雑(3)日中はもちろん夜になっても暑い―などの点が分かってきました。
 悠平は何かを見るために同じ場所にとどまることが苦手です。以前、千葉・鴨川のシーワールドで15分ほどのイルカのショーを座ってみることができませんでした。並んで順番を待つこともできませんし、外出時は道路をバスやタクシー、宅配便の配送車など大好きな車がたくさん走っているので、関心があっちに行ったりこっちに行ったりで、まっすぐ前を向いて歩くこともできません。悠平連れでわたしたち夫婦もそれなりに祇園祭を楽しむには、と考えた末に、16日の「宵山」の午後、人出が本格化する前に山や鉾を見て回ることにしました。
 ※参考リンク:京都祇園祭 http://www.gionmatsuri.jp/
 高槻から祇園祭を見に行くには阪急電車が便利です。阪急京都線の終点の河原町の一つ手前、烏丸駅で下車し、地下駅から地上に上がるともう祇園祭の舞台でした。到着したのは午後4時ごろでしたが、ふだんからにぎやかな四条通の歩道は押すな押すなの人込み。最初に見たのは、烏丸通との交差点近くにあり、山鉾巡行では毎年先頭になるという大きな「長刀鉾」でしたが、悠平はもともと人込みに強くはないこともあってか、ほとんど興味がわかないようでした。
 四条通から少し細い通りに入っていくと、やや人込みも減りましたが、それでも鉾や山が据えられている辺りは人だかりになっています。※写真は手をつないで歩く悠平とわたし。悠平はさかんに尻をかいていました。帰宅したら、あせもがぷつぷつと出ていました。

 最初はわたしに手を引かれるままに、おとなしく歩いていた悠平でしたが、細い通りからいったん四条通に戻ってからは、すぐ横を走るバスやタクシーが気になるのか、わたしが次の山や鉾を見るために角を曲がろうとすると「いや、いや」と、その場にしゃがみこんで抵抗。小パニックを繰り返すようになりました。悠平の意のままにまっすぐ進んでも、もう山や鉾はなく、車がバンバン通るただ暑いだけの道です。妻と相談して一計を案じました。「よーし、悠くん、地下鉄に乗るぞ。地下鉄の駅はあっちだぞ」と角を曲がるように誘導。電車好きの悠平の顔がぱーっと明るくなり、大きな声で「ちかてつ〜」と叫ぶと、わたしの手を引いて跳ねるように角を曲がってくれました。もともと帰りは地下鉄で京都駅に出てJRで、と決めていたのでウソではありません。
 観光客もいない路地を山や鉾を見に引き返す途中、思わぬ偶然もありました。織田信長の最後の地として名高い本能寺の跡に出ました。本能寺は現在、京都市役所の近くにありますが、明智光秀の謀反の当時は別の場所にあったということは何かの折に聞いたことがありました。たまたま行き着いたその場所は石碑でそれと分かりましたが、高齢者施設などの公共施設がいくつか入居している立派な建物です。片隅にある消防団のシャッターには、ロゴ風に描かれた「本能」の2文字。東京なら「粋(いき)」ということになりそうですが、京の都(みやこ)では何と言えばいいのでしょうか。ともあれ、ちょっと得した気分になり、「悠平の気まぐれもたまにはいいことがあるね」と妻と話しました。

 夕方で日はかげってきていましたが、3人とも汗だく。途中で何度か水やお茶を飲みながら、いくつか山や鉾を見て回りました。午後6時からは烏丸通四条通一帯は歩行者天国になり「宵山」は本番。たくさんの屋台が立ち並びます。このころにはどの山も鉾も提灯に灯りが入り、祭りムードが高まりますが、悠平連れではこの辺りまでが限界。午後6時すぎに悠平待望の市営地下鉄に乗り、JR京都駅に向かいました。※写真は歩行者天国が始まった直後の四条通

 汗だくになり、悠平の小パニックをやりすごしながらも、わたしも妻も古都の伝統の一端に触れることができ楽しい休日でした。悠平も阪急、京都市営地下鉄、JRといろいろな電車に乗れたのは楽しかっただろうと思います。

 おみやげに、山鉾の中でいちばん北に位置する役行者(えんのぎょうじゃ)山で「ちまき」を買いました。祇園祭の山鉾ではどこも「ちまき」を売っています。と言っても餅は入っておらず、1年間、門口につるして厄除けにするのだそうです。買い求めた「ちまき」には「疫病除御守」と書いてあり、幼稚園などから悠平がいろいろもらってきそうなわが家にはピッタリのようです。

 ※余談ですが、京都の祇園祭と言えば「コンチキチン」の囃子で有名です。訪れた際にも、大きな鉾からは囃子の音が聞こえてきましたが、どうもわたしには「チンチンチン」としか聞こえませんでした。風流の心得がないのかもしれません(笑)。
 京都のお菓子屋さん「おたべ」のホームページで囃子の音が聞けます。
 http://www.otabe.co.jp/natu/gion/gion17-3.html