クジラに大喜びの夏休み旅行〜パニック増大にとまどい

 7月末から8月初旬にかけてわたしが休暇を取り、妻と悠平の家族3人で和歌山県の太地(たいじ)町へ夏休みの家族旅行に行ってきました。太地町をご存知でしょうか。紀伊半島の最南端(つまり本州最南端)の串本から少し北東。古式捕鯨の発祥の地として知られています。家族旅行をどこにしようかあれこれ調べていたのですが、太地町の海水浴場では小型のクジラを遊泳させると知り、悠平が喜ぶかもしれないと考えました。加えて、クジラ料理や隣りの勝浦港那智勝浦町)に上がるマグロも食べたい、との親の欲求。あわよくば悠平にも食べさせ食域を広げてやりたいと、これは体のいい後付けの理由かもしれません。もともと春に白浜、田辺へ家族で旅行し南方熊楠の足跡を訪ねたりして、熊野地方に関心が深まっていました。難点は新大阪からJRの特急で3時間半〜4時間と時間がかかること。それだけの時間をかけて行くのなら思い切ってゆっくりしようと、3泊4日の日程を組みました。
※太地町ホームページ http://www.town.taiji.wakayama.jp/kankou/index.html
 JR西日本自慢の特急「オーシャンアロー」で出発。長旅でしたが、電車大好きの悠平はパニックもなく上機嫌。女性の車掌さんがとても子どもへの気配りが細やかな方で、通りかかるたびに声を掛けていただきました。特急は太地駅にも停まるのですが、宿の送迎は一駅先で一帯の観光拠点にもなっている紀伊勝浦駅からでした。

 事前の予報を見ても天気にはあまり恵まれそうもなく、覚悟はしていましたが、何と初日の夜は近畿地方でも和歌山県の南東部、わが家が滞在している一帯だけに大雨洪水警報が出され、那智勝浦町では1時間に80〜90ミリもの大雨になってしまいました。一夜明けた太地町でも厚い曇り空で時折雨。とても海水浴どころではなく、午前中は「くじらの博物館」を見学しました。
※太地町立「くじらの博物館」 http://www.town.taiji.wakayama.jp/hakubutukan/index.html
 ここは標本展示とともに、入江を利用したプールで小型のクジラのショーを実演したり、イルカやクジラへの餌付け体験などを行ったりしています。昨年のゴールデンウイークに悠平を千葉県の鴨川シーワールドに連れて行ったとき(過去エントリー)には、イルカのショーを5分と見ていることができず苦労しました。今回は果たして大丈夫だろうかと心配だったのですが、悠平は大喜び。立ち見だったのですが、クジラがジャンプを繰り返すたびに悠平は手をたたいて飛び跳ね、15分ほどのショーを集中して最後まで楽しみました。昨年と比べ成長(発達?)と言っていいのでしょうか、わたしも妻も少し感激でした。

 博物館の本館の展示では、悠平はクジラの模型などに関心を示しました。自分の手で触れることができるからでしょうか。ミンククジラの口の模型には特に興味津々の様子で、しばらくの間、上あごのいわゆる「ひげ」を触ったりしていました。

 古式捕鯨の資料も充実していました。有名なメルビルの「白鯨」に描かれた時代は19世紀の中ごろとのことですが、太地では17世紀には捕鯨が始まっていたようです。見張りがクジラを発見すると、何艘もの手漕ぎの勢子船が出漁しチームワークで仕留めます。連係プレーのために、旗を使って船の間の通信手段としていました。そうした旗や銛(もり)、網などが展示され、大きなセミ(背美)クジラと、銛を打ち込むタイミングをうかがう勢子船の模型も天井からつるされています。

 わたしは古式捕鯨の資料もじっくり見て回りたかったのですが、こちらは悠平は関心がないようでした。それよりも広いフロアがうれしかったのか、きゃあきゃあとはしゃぎながら走り回り、その後をわたしや妻が追いかけていく光景が繰り返されました。
 翌日、旅行3日目も天気は曇り空。前日まで降ったり止んだりだった雨はすっかり上がったので、少し足を延ばして那智の滝青岸渡寺那智大社に行きました。観光タクシーをチャーター。世界文化遺産に登録されている熊野古道の一部になっている那智山の大門坂では、雨上がりで足元が滑りやすくなっていましたが、悠平は無言ですたすたと杉木立の石段を登り続けました。那智の滝は大雨のおかげか、ふだんよりも水量が多いとのことで、悠平も雄大な流れに見入っていました。ここで悠平に引かせたおみくじは大吉。赤ん坊のころから神社仏閣には興味を示していたこともあり、青岸渡寺那智大社では悠平は境内をおとなしく見て回りました。


 予想外だったのはタクシーへの反応でした。このブログでも再三、紹介していますが、悠平はタクシーやバス、電車に乗るのが大好きです。今回は坂道が続く中をあちこち回るのでタクシーをチャーターすることにしました。運転手さんは女性で、とても親切な方でした。宿を出て最初に降りたのは大門坂のふもと。「では、石段を登り切ったところでお待ちしています」と言ってタクシーは出発、いつものように悠平は「しゅっぱつしんこー」「ばいばい」と手を振りました。親子3人で石段の坂道をふうふう登っていくと、運転手さんが待っていてくれました。汗をふきふき「さあ悠くん、次に行くよ」と声を掛けたのですが、ここで悠平が激しいパニック。「いや、いや」と泣き叫び、地面にしゃがみこんでしまいました。悠平がタクシーに乗ろうとしないというのは、わたしも妻も初めての経験で、頭の中は「???」でした。
 どう声を掛けても悠平は泣き止まず、仕方がないのでもう少し歩いてからタクシーと落ち合うことにしました。いったんは泣き止んで一緒に歩いた悠平でしたが、再びタクシーを見るとまたパニック。やむを得ず、泣きわめきながら手足をばたつかせる悠平をわたしが抱え上げて、タクシーに乗せました。事情を知らない人なら、幼児がまさに連れ去られようとしていると思って110番したかもしれません。その後も悠平は、那智の滝を見た後もタクシーに戻って少しパニック。しかし、最後の青岸渡寺那智大社ではパニックを起こすこともなくタクシーに戻りました。
 悠平がタクシーを嫌がったのは、ほんとに初めてのことでした。旅行から帰った今も、妻と「あれは何だったのだろう」と話しています。仮説の一つですが、一度「しゅっぱつしんこー」して見送ったはずのタクシーと運転手さんが、別の場所に移動したのにもかかわらず、また姿を見せたことが、悠平にとっては想定外だったのかもしれません。そして同じような状況が2回、3回と続くうちに慣れてきた、ということかもしれません。いずれにせよ、最近は悠平がパニックを起こした際の暴れぶりが増してきているような気がしています。ほかの子どもに比べて、自我形成とそれに伴う反抗が遅れてやってきたのかもしれません。
 結局旅行中は天気に恵まれず、とうとうクジラと泳ぐ海水浴場には行けずじまいでした。それでも、親子3人で4日間をゆっくり過ごすことができて、楽しい夏休みでした。
※おまけの写真

 熊野の八咫烏(やたがらす)はサッカー日本代表チームのエンブレムになっています。那智大社の絵馬はその八咫烏です。那智大社では世界一になった女子なでしこジャパンの必勝祈願祭が行われていたとか。

 「くじらの博物館」周辺の歩道には様々な種類のクジラのタイルがはめてあり、見た目にも楽しめました。

 博物館近くのお店で食べたクジラのミニフルコース。クジラ料理を堪能できて満足でした。悠平にも竜田揚げを食べさせようとしたのですが、衣をかじっただけでした。残念。