世界自閉症啓発デー・発達障害啓発週間によせて〜ブックレビュー(1)医師による入門書・概説書

 妻(yuheimama)です。今日4月2日は、国連が定めた「世界自閉症啓発デー(World Autism Awareness Day)」です。またこれを機に日本国内では、4月2日から8日までを「発達障害啓発週間」としています。
※世界自閉症啓発デー 日本実行委員会公式サイト
http://www.worldautismawarenessday.jp/htdocs/index.php?action=pages_view_main&page_id=13

 そこで発達障害啓発週間にあわせ4回にわたり、自閉症発達障害関連書籍から、私たち夫婦の参考になった本、感銘を受けた本を紹介したいと思います。ブックレビュー(1)医師による入門書・概説書(2)発達障害当事者による体験談など(3)療育・生活支援(4)親による著作・漫画・番外編−とカテゴリー分けし、著者名の五十音順で紹介します。まだまだ私たちも勉強途上ですので、「あの本は載せないの?」と思われることも多々あるかと思いますが、今後も参考になる本があれば紹介してまいりますのでご容赦ください。なお、各本についてのコメントは必ずしも概要ではなく、私個人の着目ポイントを中心にしています。

ブックレビュー(1)
「医師による入門書・概説書」
 自閉症発達障害とはどのような障害か?それに対する療育は?などについて、一般向けに書かれた本を選びました。医師によって共通している部分と意見・見方が異なる部分があるので、何人かの著者による本を読み比べるとよいかと思います。基礎知識を得ることはもちろんのこと、多様な見方やデータを知った上で、療育・教育の方向性、子どもの将来像を考える材料とすることができると思います。なお、療育法TEACCH、ABAについては、過去のエントリー「最近始めた生活支援」をご参照ください。

自閉症のすべてがわかる本 (健康ライブラリーイラスト版)

自閉症のすべてがわかる本 (健康ライブラリーイラスト版)

・佐々木正美<専門:児童青年精神医学、医療福祉学、TEACCH研究>監修『自閉症のすべてがわかる本』(講談社) 「うちの子、もしかしたら自閉症?」という気付きのファーストステップから、だれに何を聞けばいいか(医師、臨床心理士児童相談所などへの相談)、自閉症の特徴、TEACCHを中心とする療育、将来の自立を目指しての支援についてを、簡潔かつイラスト豊富に解説しています。入門書として最初に手にするのに良いと思います。

発達障害の豊かな世界

発達障害の豊かな世界

発達障害の子どもたち (講談社現代新書)

発達障害の子どもたち (講談社現代新書)

杉山登志郎<専門:児童青年期精神医学>『発達障害の豊かな世界』(日本評論社) 自閉症アスペルガー症候群を中心に、発達障害の臨床例を豊富に紹介しています。「自閉症と仕事」の章では、発達障害の臨床では小学校三、四年レベルの学力―四則計算および簡単な分数程度の計算力と、新聞が読める程度の国語力など―があれば自立には困らないと言われていることを紹介。知的障害の9割近くを占めるIQ50以上のレベルでは普通の労働に問題はなく、知的障害よりも適応障害に問題があると見ています。この問題を考えるにあたって、自閉症を孤立型、受動型、積極奇異型の3タイプ別に比較・考察しています。また、早期療育には効果があり、特殊な訓練なのではなく、普通の生活で普通の生活を通して生活全般の機能を高めていく生活モデルであると述べています。杉山医師にはこのほかにも著書が多数あり、後年出版された『発達障害の子どもたち』(講談社現代新書)は、『〜豊かな世界』のエッセンスを引き継ぎながら、同書出版後に思い至った「根本的な問題」=「発達障害の治療に関する誤解と偏見」という問題を扱っています。

あきらめないで! 自閉症 幼児編 (健康ライブラリー)

あきらめないで! 自閉症 幼児編 (健康ライブラリー)

・平岩幹男<専門:小児神経専門医>『あきらめないで! 自閉症 幼児編』(講談社) 「早期絶望から早期療育へ」をキーワードに、幼児期の自閉症について健診、診断、療育、小学校の選らび方などを解説。療育に関してはABA、TEACCH、PECSなどを概観。早期療育で子どもの未来は変わるという考えをベースに、療育はABAを基本にするという立場をとっています。2〜5歳の早期に集中的な個別トレーニングをすることで、特に言語的コミュニケーション能力の獲得が期待できるとしています。小学校の選び方では、子どもの将来像を考えて「一般社会でみんなと同じように暮らせると信じるならば、2次障害などの問題が出てくるかもしれないけれど、通常学級でやっていけるように一生懸命やってみよう」「それが無理だろうと考えるなら、世間体などより子どもの状況を見て、特別支援級や特別支援学校を選択する方がいいかもしれない」とアドバイスしています。