たくさんの方々に助けていただきながら前向きに――北摂杉の子会2012年合同公開講座の報告

 妻(yuheimama)です。11月30日(金)に高槻現代劇場で表題の講座が開催されました。以前のエントリー(社会福祉法人 北摂杉の子会 2012年合同公開講座のお知らせ)で紹介したとおり、この講座は「発達障がいの子どもの保護者による―家庭での支援実践報告―」と題し、北摂杉の子会に属する「児童デイサービスセンターan(大阪市)」「自閉症療育センターwill(高槻市)」「自閉症療育センターLink(枚方市)」を利用していた保護者各1名が30分ずつ、家庭での取り組みや経験談を発表しました。willからは私、yuheimamaが発表しました。当日は、現在センターに通われている保護者の方々をはじめ、一般応募の方々、行政関係者など、300人近くが出席。皆さん、大変真剣に聞き入っていらっしゃいました。

 最初の発表は、anの保護者の方でした。現在小学校の支援学級に在籍している、重度自閉症の女の子を持つお母さんです。自宅を、お子さんの行動に合わせた導線を考慮し、大改造・構造化された実例を紹介されました。大改造によって、それまでパニックや自傷行為のあったお子さんが、随分と落ち着かれたそうです。また、スケジュールや支援物は子どもの成長に合わせて作り替えていく必要があると指摘し、(センターでの)療育の終わりが支援の終わりにならないように対応力を付けていきましょうと語っていました。最後に「たくさんの人に助けてもらいましょう」と会場の皆さんに呼び掛けた姿に、先輩ママの頼もしさを感じました。

 二番目は、私の発表です。テーマは「前向きにあきらめる子育て」です。「前向きにあきらめる」という表現は矛盾して聞こえるかもしれませんが、次のような意味を込めてタイトルとしました。以下、発表原稿の冒頭部分を引用します。

 私は、息子に障害があると分かったとき、大変ショックを受け、それまで抱いてきた「こんな子育てをしたい」「こんな子になってほしい」という思いが打ち砕かれた気がしました。なぜ自分の子が、なぜ自分がこんな目に遭わなくてはならないんだと苦悩しました。でも息子は毎日、笑顔を見せてくれます。その笑顔に、障害があってもなくても、この子にはこの子なりの楽しみがあり、幸せがあるのかもしれない、あるに違いないと思うようになりました。そこで、自分がそれまで思い描いてきた子育てへの思い入れをすっぱりあきらめて、あるがままのわが子を受け入れ、この子に合った育て方を積極的に、前向きに模索していこうと思うようになりました。そしてそれが子どもの自尊心を育て、息子なりの生き方を見つけることにつながるのではないか、と考えるようになりました。本日は、このように前向きにあきらめる子育てをしている、私たち家族の取り組みをお話ししたいと思います。

 これに続いて、「(悠平の)プロフィル」「診断を受けるまで」「療育を受けるようになってから」「willでの療育を終えて」「幼稚園登園拒否を経て」「子育てのポイント」という流れでお話をしました。「willでの療育を終えて」では、これまでこのブログで紹介してきた家庭療育や生活支援・支援グッズをスライドを用いて説明しました。家庭療育に関しては、ブログではその時々の取り組みを時系列で掲載してきましたが、発表では療育内容を「ひらがな学習」「カタカナ学習」「数・数量」「マッチング」「手先の微細運動」「模倣課題」の領域ごとに体系化し、時間制限があったためにダイジェスト版にはなりましたが、スモールステップでのスキルアップの様子を紹介しました。

 最後はLinkの保護者の方。広汎性発達障害の小学生の息子さんを持つお母さんです。当初、診断が信じられずに幾つかの病院で検査を受け、「アスペルガー症候群」「高機能自閉症」と名称こそ異なるものの、自閉症スペクトラムの診断を受けたとのことでした。Linkでの視覚化・構造化を体験し、家庭でもスケジュールの視覚化にトライした経験談を披露。なんとスケジュールはトライ&エラーを繰り返すこと5回。負けず嫌いのお母さんが息子さんへの愛情全開で体当たりしている様子が目に浮かびました。スケジュールのほかにも、お母さん自らが手話を習って、話を視覚化することに挑戦するなど、新鮮な感動を受けました。

 三者三様、子どもの特性も異なれば、取り組む内容も異なりましたが、共通していたのは「わが子の思いをもっと知りたい」「ありのままのわが子を受け止め、支援・応援していきたい」という親心と、「親だけで抱え込まないで、専門家の知恵を借りたり、たくさんの方々に助けてもらおう」といういい意味での開き直りだったように思います。

 発表前はド緊張しましたが、ほかの発表者の方も、聞きに来てくださった方々も、障害児を持つお仲間だと思うと、壇上では少しだけ気持ちが緩みました(「ド緊張」から「普通の緊張」にレベルダウンした程度ですが)。講演後には、このブログを通して知り合った方とついにお会いすることができたり、新たに知り合うことのできた方もいらっしゃって、楽しいひと時を過ごすことができました。

 7月の発表内容の素案作りから、レジュメの作成、原稿の執筆、発表の練習と、あっという間の4カ月でした。発表前は緊張しまくりましたが、発表を終えた今、この機会を与えていただいて幸運だったと思っています。原稿を書きながら、これまでの我が家の歩みを振り返ることができ、これからもたくさんの方々に力をお借りしながら前を見て歩いて行こうと決意も新たになりました。willの先生方をはじめ、北摂杉の子会関係者の皆様、私の話を聞いてくださった皆様、療育園で行事欠席した私のために悠平をフォローしてくださった先生方、この場を借りてあらためてお礼申し上げます。お世話になりました。ありがとうございました。そしてこれからもよろしくお願いします!