今年の3冊―番外編―

 妻(yuheimama)です。「今年の3冊」シリーズ(?)最終回は、本ではなかったのでエントリーできなかったDVD作品を紹介したいと思います。

 『マイネーム イズ ハーン』(20世紀 フォックス エンターテイメント ジャパン)の主人公はアスペルガー症候群の青年リズワン・ハーン。愛情深い母のもとで育ったイスラム教徒のリズワンは、母の死後、弟が住む米国へ移住。そこで知り合ったシングル・マザーのヒンズー教徒マンディラと結婚します。家族3人で楽しく暮らしていた2001年、9・11米中枢同時テロが起こります。その後、リズワン一家はテロとは無関係であるのにも関わらず、ハーンというイスラム教徒の名前から偏見にさらされ、家族に悲劇が訪れます。その悲劇後、リズワンは自閉症スペクトラムならではの真っ正直さで社会を生き抜き、周囲の人々の心までも変えていくというストーリーです。

 自閉症の映画といえば以前に紹介した『レインマン』が有名ですが(「久しぶりに『レインマン』を観ました」を参照ください)、『マイネーム イズ ハーン』では、主人公が聴覚過敏や視覚過敏、場の雰囲気や言葉のニュアンスを読み取れないといった自閉症スペクトラムの特性を体現しつつ、さらに米国における9・11後のイスラム教徒への懐疑や偏見といった人々のまなざしを絡めて描いています。リズワンに向けられたまなざしは、9・11以降、渡米した経験のない私にも「そういうことがあったのかもしれない」と思わせるシビアなものでしたが、その状況を突破できたのは、彼が決して信念を曲げない自閉症スペクトラムだったからなのかもしれません。

 『レインマン』を自閉症がどのような障害なのかを表現した入門編とするなら、『マイネーム イズ ハーン』はそれを幾重にも深化させた作品といえるのではないかと思います。主演はインド映画界の大スター、シャー・ルク・カーン。迫真の演技です! ちなみにこの作品、本編が162分という長編。悠平がいつもより早く寝た日に観始めたところ、途中で帰宅した主人も、作品のあまりの深さに引きこまれ最後まで観入ってしまいました。

 自閉症を扱った作品はほかにも複数、DVD化されています。来年はアクションスターとして名高いジェット・リーが出演を熱望し、自閉症の息子を持つ余命わずかな父親を演じたという『海洋天堂』や、フランスの女優、サンドリーヌ・ボネールが自らメガホンを取り、自閉症の妹を撮った『彼女の名はサビーヌ』も観たいと思っています。フランス映画好きの私、サンドリーヌ・ボネールの出演作は何本か観ているのですが、『彼女の名はサビーヌ』の予告編を観た時は「自閉症なんて自分には関係ないや」と思って、劇場上映を見逃しています。話が横にそれましたが、人生ってどう転ぶか本当に分からないものだと、齢40を過ぎてつくづく思います。

海洋天堂 [DVD]

海洋天堂 [DVD]

彼女の名はサビーヌ [DVD]

彼女の名はサビーヌ [DVD]