悠平、因果関係を語る

 妻(yuheimama)です。自閉症児・者は因果関係を理解するのが難しいと言われます。特に原因から結果を導くことはできても、結果から原因を求めるのが苦手とのこと。アスペルガー症候群当事者のニキ・リンコさんが著書『自閉っ子におけるモンダイな想像力』(花風社)で「いちばん『自分はこれが弱い』と自覚しているのが『逆走』である。<中略>『逆走』とは、因果の流れを、反対にさかのぼること」と書いているように、知的障害のない方の場合でも困難なようです。

自閉っ子におけるモンダイな想像力

自閉っ子におけるモンダイな想像力

 これを読んで、知的障害のある悠平に物事の因果関係を教える、あるいは考えさせるにはどうすればいいのだろうかと、答えのでないまま考え続けていたある日のこと。夜、就寝前にトイレに誘うと「さっきトイレに行ったから、おしっこ出ない」と、悠平が言ったのです。「おぉ、因果関係を自ら語った〜!!」と興奮しながら、「そっかぁ、トイレに行ったから、出ないんだね」と確認した私。以来、日常の会話でも「AだからBだね」といった因果関係を意識的に語りかけるようになりました。

 それと並行して、簡単な事柄に関して「Bなのはどうして?」と、原因・理由であるAを考えさせる質問を時々するようになりました。例えば絵本の読み聞かせの際、これまでは新しい語彙が出てきたときに話を中断して説明することはあったのですが、内容についての質問はあえてしないできました。絵本が悠平にとってはお楽しみだったので、そこに無理矢理トレーニング的要素を持ち込みたくなかったからです。ただ一方で、好きな絵本の文章は暗唱できるようになっていましたが、内容をどの程度理解しているのかは気掛かりでした。

 そこで、これまで繰り返し読んできた慣れた絵本を読むときに限って1〜2回、「これはどうして?」といった内容に即した質問を挟んでみることにしました。悠平は嫌がることもなく、答えることもあれば答えられないこともあります。答えられたときには「そうだね。すごいね、悠くん」と誉めまくり。答えられない場合は、「○○だからだね」と、さらっと説明して先に進みます。答えられないのが、内容を理解していないからなのか、因果関係が分からないからなのかは判断できませんが、本人から絵本の楽しみを奪わない程度に、こうした「考える」トレーニングも時々折り込んでいこうかと思っています。

 表現力がついてきたことは素直にうれしいのですが、次から次へと課題も出てきます。自閉症スペクトラムは奥が深い…。主人の言葉を借りるなら「試行錯誤は終わらない」です。

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 新しい年になりました。
 昨年はたくさんの方にご訪問をいただき、ありがとうございました。年間のページビューは約11万7千件にもなりました。更新に際しては、わたしたち一家の経験がどなたかの役に立つよう願いながら記事を書いてきました。とりわけ、お子さんが広汎性発達障害自閉症と診断されて間もなくの、不安に包まれた親御さんたちに何がしか得るところがあったとすれば、わたしたち夫婦にとってこれ以上の喜びはありません。
 この春、悠平は療育園から特別支援学校に進みます。転勤族であるyuheipapaも大阪に来て2年です。この1年もいろいろなことがあるだろうと思いますが、「3人一緒なら越えられない壁はない」を家族の合言葉に、一歩ずつ前へ歩んで行きたいと思います。

 本年もよろしくお願いいたします。  yuheipapa yuheimama