子ども部屋構造化のポイント

妻(yuehimama)です。2回にわたり、子ども部屋の構造化について紹介しました( 「効果てきめん! 子ども部屋の構造化 その1」 「効果てきめん! 子ども部屋の構造化 その2」を参照ください)。今回は、前2回と重なる部分もありますが、構造化の目的と実際に構造化を計画・実行する際に気を付けた点などをまとめたいと思います。

まずは構造化の目的です。一つの場所を多目的に使うと混乱しやすい自閉症児の特性を考慮して、どこで何をするのかを明確化することです。できるだけ1カ所で1つのことを行うようにスペースを仕切り、そこで何をするのかを一目でわかるようにします。悠平の部屋の場合、寝るスペース、着替えスペース、学校の準備スペース、おもちゃスペース、家庭学習スペース、パソコンスペース、絵本スペースといった具合です。認知レベルによっては、それぞれのスペースで何をするのかを絵カードで視覚支援し、スケジュールと対応させるのも有効かと思います。

  

計画段階では、当たり前のことですが、家具類の設置スペースを確保するためにきっちり計測を行いました。子ども部屋の広さはそれぞれのご家庭によって違うでしょうし、きょうだい児さんがいらっしゃると調整が難しく、そう広いスペースは確保できないかもしれません。悠平の部屋も5畳という、複数のスペースを仕切るにはぎりぎりの広さです。だからこそ、無駄なスペースが出ないように、また、置いてみたら入らなかったということがないように、家具類の配置イメージだけで実施せずに、事前の計測をしっかり行いました。イメージ通りに配置できずに物が入り乱れた部屋では、余計に頭が混乱してしまいますから。

家具類は子どもが扱いやすい大きさ、高さにすることが望ましと思います。仕切りも、子どもの目の高さで実際に仕切られているかを確認するようにします。悠平は身長が130センチ以上あり、1年生としてはかなりの大柄ですが、それでも152センチの私とは、視線の高さや手の届く範囲が異なります。学習机で使っているいすは大人用のものなので、クッションや足台を用意して、悠平の体に合わせるように調整しています。

可能なら窓のない部屋のほうがよいと思います。壁を有効活用できますし、窓の外からの刺激を遮断して、活動に集中できるからです。実際、悠平の部屋は家の中央に位置する窓のない部屋なのですが、ほかの部屋と違って、車の音や人の声がほとんど聞こえず、家の中で最も静かな部屋です。窓がある場合はカーテンが必要になりますが、カーテンを選ぶ場合は無地などのシンプルなものがよいと思います。気を利かせたつもりで子どもが好きなキャラクターの生地を使ったりすると、やるべき活動よりもカーテンの柄に関心が向いてしまうかもしれないので。

わが家では子ども部屋を確保するために、本棚4竿を移動する必要があったので、自分で移動させられない大型の本棚に関しては、家具移動サービスをしている業者に依頼をしました(ヤマトホームコンビニエンスやアート引越センターなどでやってくれます)。できれば部屋の構造化は、子どもが変化に不安を感じないように、子どもに見られない時間帯に一気に実行してしまうに越したことはないと思います。わが家の場合は、本棚の移動のために本をすべて出す必要があったので準備に1週間ほどかかり、悠平は初めのうち「かたづけないよ」とちょっと不安そうでした。そこで、一番好きなパソコンを常時使える状態にしておくと、そのうち気にしなくなりました。環境変化に不安を感じさせない配慮が必要だと思います。

こうして実行した構造化によって、悠平はすんなり一人寝に移行することができました。また、衣類やおもちゃなどは、これまで脱いだら脱ぎっぱなし、使ったら使いっぱなしでしたが、構造化によってそれぞれの定位置が決まったことで、声掛けをして私も手伝えば、少しずつではありますが片付けをすることができるようになってきました。一人で片付けられるようになるにはまだまだ時間がかかりそうですが、一緒に「おかたづけ〜、おかたづけ〜、さぁ〜さ、みんなでおかたづけ〜♪」と歌いながら習慣づけていきたいと思っています。

また、悠平の基本的な活動を子ども部屋で完結させることで、自分の物・事と自分以外の物・事という「自他の区別」への理解も期待できそうです(cf.社会の中で生きる子どもを育む会『自閉っ子のための道徳入門』<花風社>pp.161〜)。悠平は、自分の物以外でも気になると、引き出しや箱などを開けることがあり、そのたびに「これはだれの?」――「おかあさんの」、「ゆうくんのじゃないよね。開けません」というやり取りを繰り返してきました。子ども部屋を独立させてからは私自身も悠平の部屋の物を使いたいときには「ゆうくん、貸してね」と声を掛けるようにしています。

 さらに、ちょっと大げさかもしれませんが、悠平は自分の部屋を持つことで、自分が確固とした家族の一員として尊重されていることを、感じているのではないかと思うことがあります。「ここは ゆうへいくんの おへや」ととてもうれしそうに、誇らしげな表情を見せるのです。不安感が強く、まだまだ甘えん坊の悠平ですが、この構造化が悠平の自尊心(セルフエスティーム)を高めることに与してくれれたなら、予想以上の効果です。

以上、今回の子ども部屋構造化プロジェクトのポイントを、思いつくままに書き連ねました。今後、マイナーチェンジする部分が出てきたら、また紹介したいと思います。