良いフラッシュバック、辛いフラッシュバック

妻(yuheimama)です。悠平はごく稀にですが、フラッシュバックを起こして泣き出すことがあります。「フラッシュバック」という言葉は、過去の出来事、特に嫌だったことや辛かったことなどを思い出し、泣いたりパニックを起こす場合に使います。自閉症に関する概説書を読むと、その特性の一つとしてフラッシュバックに関する記述があります。

悠平の場合も、フラッシュバックを起こしたときには嫌な体験を思い出して泣き出します。そんなときは、担任の先生からのアドバイスもあり、慌てず穏やかに寄り添い、少し落ち着いたところで気持ちを切り替えるように工夫しています。先日は、私が夕食の準備をしているときに突然泣き出し、抱きついてきました。ひとしきり泣かせた後、大好物の唐揚げを見せたら「唐揚げ!」と言って、気持ちが切り替わりました。

唐揚げで気持ちが切り替わるところが、何とも悠平らしくて微笑ましいのですが、そうは言ってもフラッシュバックは辛そうです。何とかしてあげたいけれど、過去の記憶についてはどうすることもできません。そんなある日、ST(言語聴覚士)から、次のような話を聞きました。

きっかけはSTの宿題として取り組んでいる写真日記です(写真日記については「今年度の療育」を参照ください)。悠平は日記の題材を選ぶ際、必ずしも最近のことばかりではなく、数カ月前に外出したときのことを突然思い出したように選ぶことがあります。例えば今は12月ですが、夏休みの旅行のことや秋の外出のときのことなどを選びます。それを見たSTから、「これはフラッシュバックだね。フラッシュバックって、辛いことを思い出すことだけじゃないんだよ。楽しかったことを思い出すこともフラッシュバック。楽しかったことをたくさん思い出せると、セルフエスティーム(自己肯定感)が上がるから、それを日記に書いたときなどは、お母さんも一言、『悠君の笑顔を見てうれしかった』とか『こんなところがよかった』とか、書き添えてあげるといいですね」といった趣旨のことを言われました。これは目からウロコ。「フラッシュバック=辛い」と思いこんでいたので、「良いフラッシュバック」なんて考えたこともありませんでした。

以来、写真日記に取り組む際には、私も一言添えるようになりました。もちろんそれで「辛いフラッシュバック」がなくなるわけではありませんが、悠平とともに過ごした楽しい時を一緒に思い出して、セルフエスティームがアップするなら、親子ともどもハッピーです。そしてそんな幸福感が目には見えずとも蓄積され、辛いことを乗り越える原動力になればと願わずにはいられません。