初対面の大人と一緒でも大丈夫

 yuheipapaです。
 4月2日は世界自閉症啓発デーです。悠平が発達障害の告知を受けるまで、この日があることをそれほど意識はしていませんでした。そうしたかつての自分をも振り返りながら、自閉症とはどんな障害なのか、その知識が社会に広がってほしいと今は願っています。

 さて、休みの日はなるべく悠平と一緒に外出するようにする習慣は今も続いています。乗り鉄にしても巡礼にしても、父子の二人旅が中心なのですが、ふと、わたしの知人も加わって、つまり悠平から見れば知らない大人も混じってのグループ行動を経験させてみてはどうかと思い付きました。yuheimamaとも相談。この春から悠平もいよいよ6年生です。社会性を身に着けるトレーニングにもいいかもしれない、ということで実行することにしました。
 最初はわたしの10数年来の知人のYさん(男性)。仕事の関係でたまたま知り合い、同じ福岡県の出身で子どものころは非常に近い場所にいたことが分かり、以来、親しい付き合いが続いています。悠平の発達障害や知的障害のことも、早くから伝えていました。そのYさんと、千葉県君津市にある九州ラーメン店に、本場のラーメンを食べに行くことになり、悠平も連れて行くことにしました。
 なぜ君津で九州ラーメンかと言えば、1960年代に八幡製鉄(その後、新日本製鉄、現新日鉄住金)が君津に製鉄所を建設した際、福岡県北九州市の八幡製鉄所から多くの社員、家族が移り住みました。彼らを追うようにして、北九州から移り住んだ飲食店も少なくなかったようで、その中に今も続くラーメン店もあるようです。
 計画を相談するうち、Yさんが悠平の乗り物好きを察してくれて、レンタカーを調達して、九州ラーメンの食事の後は近隣をドライブすることになりました。既に何度か「悠くん、今度、お父さんのお友だちと千葉にラーメンを食べに行こう」と声を掛け、悠平も「うん、行くよ」と答えてはいたのですが、日程の詳細を決めた後で「ラーメンを食べたらレンタカーでドライブだ」と告げると、悠平は大喜び。さっそく「レンタカーは何ですか」と、車に疎いわたしにはよく分からないのですが、車種を次々に口にしました。悠平が喜んでついてくるだろうとの作戦は当たりました。
 さて当日、君津の隣りの木更津まで高速バスで行き、Yさんと落ち合いました。事前に何度も練習していた通りに「初めまして、悠平です。いつも父がお世話になっています」とすらすらとあいさつを口にすることができました。ただし、意味はよく分かっていないだろうと思いますが。
 移動の車中では、わたしとYさんが主に話している中で、悠平はと言えばレンタカーの乗り心地を楽しんでいるようで、まったくパニックを起こすこともなく静かに過ごしていました。目指すラーメン店は行列が当たり前の評判店で、昼食時より少し早めに着いたのですが既に行列。並んで間もなく、悠平が「遅いねえ」「まだあ?」とぐだぐだになり始めましたが、何とかパニックに至る前に席に着くことができました。わたしとYさんは予定通りラーメンを注文。悠平もラーメンにチャレンジする予定だったのですが、やはり食べなれた物の方が安心するのか、最終的にチャーハンに変更。餃子も頼みました。大人1食分のチャーハンを見事に平らげ、Yさんをびっくりさせました。
 その後のドライブでも悠平は静かに過ごし、君津駅での別れ際にはわたしから促されながらも「お世話になりました。ありがとうございました」とお礼もきちんと言えました。電車に乗ってから「楽しかった?」と聞くと「楽しかった」。「Yさんは怖くなかった?」「怖くない」「また一緒にドライブに行く?」「行きます!」と、言葉数は多くはありませんでしたが、本当に初対面のYさんと一緒でも苦にならなかったようでした。
 その1週間後、今度はYさんのほか沖縄から来たTさん(女性)、広島から来たGさん(男性)とわたしたち父子の計5人でグループ行動。ちょうど満開の上野公園の桜を見て、浅草で昼食を取りました。店選びで悠平は少しぐずりましたが、ほかは通常モード。「父がいつもお世話になっています」の初対面のあいさつも板についてきた観がありました。そば屋での昼食では、Tさん、Yさんからエビ天を1本ずつ分けていただき、わたしが促すと「ありがとう」とお礼も。グループ行動をつつがなくこなしました。

 悠平はこれから長じるにつれ、わたしやyuheimamaがいないところでも、初対面の大人と顔を合わす機会が出てくるでしょう。人と人とが関わりをもつときに、ささやかなひと言であっても「こんにちは、はじめまして」と言葉を交わすことができれば、その後のコミュニケーションの可能性も広がるのだろうと思います。ただ、だれかれ構わず声を掛けていくとなると迷惑かもしれません。その辺の兼ね合いをどうやって悠平に教えていくかは、かなり難度が高い課題になりそうです。その意味でも、社会で自閉症への理解が進んで行けば、その分、自閉症児者とそうでない人たちとの相互理解も進むと思います。そうなることを願っています。

 

 ちなみに君津のラーメンの味は最高でした。お店の住所は正確には木更津市内になるのですが、かつては君津製鉄所関係の社宅が立ち並んでいた地域でした。九州ラーメンは豚骨で取った濃い白濁スープが特長ですが、実は九州、さらには福岡県内でも地域によって違いがあります。東京の九州ラーメン店では脂っこいスープの博多流の店が多いように感じるのですが、わたしが生まれ育った北九州近辺では豚骨ながらもさほど脂っこくはないのが主流だったように思います。今回訪ねた店のラーメンは、その昔に北九州でよく食べたラーメンそのままの味。博多風の「替え玉」(スープを残せば、そこにおかわりの麺を入れてもらえる)がなく大盛りの注文ができるのも北九州風でした。

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※九州ラーメンの左は高菜漬けごはん

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※悠平はチャーハンでした