由緒正しいお子様ランチ

 きょう23日は、仕事が休みのわたしが悠平の相手をすることにして、妻は悠平の妊娠以来行っていなかった人間ドックに出掛けました。悠平とどこかに遊びに行こうと数日前からあれこれ調べていましたが、問題は食事です。偏食の激しい悠平がまともに食べられるものは、鶏のから揚げかハンバーグ、メンチカツ、牛肉の煮つけ(すき焼き)、カレーライス、ポテトフライぐらい。家族3人での外食はたいていはファミリーレストランで、悠平は最初はお子さまランチだったのですが、最近ではサイドオーダーにあるフライドチキン(から揚げ)とポテトフライ、単品でパンという組み合わせです。今回はせっかくの父子2人の休日。あれこれ調べて、由緒正しいと思われるデパートのお子さまランチを食べさせることにしました。
 昼近くに自宅を出て地下鉄を乗り継ぎ上野へ。松坂屋上野店の南館6階に「ファミリーレストラン」という冗談のような名前の食堂があります。古くは「大食堂」と名乗っていたようなのですが、今はそばやすしのほか洋食、中華のメニューがある「ファミリーレストラン」と、隣りに和食を中心にした「お好み食堂」とがあります。その「ファミリーレストラン」の看板メニューの一つが「お子様ランチ」です。入口のサンプルの説明では「日本で最初に『お子様ランチ』が登場したのは、ここ、松坂屋上野店大食堂です。(ファミリーレストランの前身)お子様には楽しいおまけがつきます」とあります。

 ウイキペディア「お子様ランチ」の記載によると、子ども向けのおかずを何品か集めたメニューは1930年、日本橋三越がもっとも早く売り出したようです。松坂屋は翌年のようですが、三越が「御子様洋食(定食の説も)」と称していたのに対し、松坂屋は「お子さまランチ」を名乗ったとしています。つまりは、登場から80年になろうかという由緒正しいお子様ランチです。
 到着したのは午後1時ごろ。10数人ぐらいが並んでおり、隣りの「お好み食堂」にしようかと思いました(ここにも、ほぼ同内容と思われる「お子様ランチ」のサンプルがありました)が、見ていると並んでいるお客さんは次々に案内されています。列の最後尾に並びましたが、ものの5分ほどで席に案内してもらいました。注文は、悠平にお子様ランチ、わたしはメンチカツとエビフライの盛り合わせの定食、それに悠平が好きなフライドポテトを単品で頼みました。待つことしばし。堂々とした風格のお子様ランチが運ばれてきました。

 ハンバーグにエビフライ、から揚げ、ウインナー、フライドポテトが3切れに千切りキャベツ。ごはんに刺してある旗は日の丸で、これは今や珍しいのではないでしょうか。オレンジジュースにプリンがついて735円は、値段だけ見てファミレスのお子様ランチに比べると随分高いようにも感じますが、たまの休みにせっかくデパートに来たのだから、と思えばさほど気になりません。悠平は、と言えば、いつもの通り。さっそく大好きなから揚げに手を伸ばして、黙々と食べ始めます。次にポテト。ご飯は一度、スプーンで口元に運びましたが、そのままプレートに戻しました。ふりかけが嫌なのかと思い、わたしのご飯を分けようとしましたが、手ではらいのける仕草で拒否。においか何かよく分からないのですが、悠平はたまに外食でご飯を拒否することがあります。代わりにポテトは単品の一皿を食べ切りました。
 悠平独特のこだわりはエビフライ。食の分野の「悠平ルール」の典型とも言うべきもので、衣としっぽしか食べません。以前は衣しか食べませんでしたが、最近、しっぽも食べるようになりました。衣のカリカリした歯触りが大好きなようで、器用に衣だけを歯でかじりとっていきます。後には、写真のように裸にむかれたエビだけが残ることになります。メンチカツは中身もしっかり食べますが、コロッケやカキフライはエビフライと同じような食べ方になり、後にポテトやカキだけが残ります。きょうはわたしのエビフライのしっぽも2匹分、食べました。

 外食のハンバーグは、最近は食べたり食べなかったりするようになりました。今日はほとんど食べずじまい。ただ、わたしのメンチカツを取り分けてやったので、そっちに夢中でハンバーグは眼中にない、という風にも見えました。裸のエビとハンバーグ、ウインナーは、わたしがおいしくいただきました。特にハンバーグはふっくらとしていてソースもおいしかったです。
 意外だったのは、悠平がプリンもジュースも拒否したこと。帰宅してから妻に聞きましたが、以前は好きだったプリンを最近は食べないことが多いようです。悠平は離乳食のころは何でも食べていたのですが、そのうちに食べないものが一つ、二つと増えていき、偏食が激しくなりました。プリンも同じ道をたどるのでしょうか。とまれ、悠平なりに満腹感は得たようで、ポテトを平らげると「ごちそうさま」でした。
  食堂のある6階の一つ上が屋上でゲームコーナーがあり、幼児向けの乗り物も充実しているようでした。支払いの際には、お子様ランチを頼んだ子どもへのサービスでしょうか、乗り物1回無料のサービス券ももらいました。さっそく階段で屋上に向かったのですが、ここで悠平が突然の大パニック。「エレベーター、エレベーター!」とわんわん泣き出し、エレベーターの前から離れようとしません。「悠くん、ほらピカチューがいるよ。乗ろうよ」と声を掛けても一向に泣き止まず、仕方なくエレベーターで1階まで下りました。
 もともと悠平はゲームコーナーが大好きです。何がパニックの原因だったのか、今もよく分かりません。もしかしたら、階段で屋上に上がってゲームコーナーよりも先に目に入ったのがこれもまた大好きなエレベーターだったために、悠平ルールとして「次はエレベーター」となっていたのかもしれません。一度エレベーターで1階まで下りて、再び屋上に戻ることを試してもよかったかな、と後で思いました。
 1960年生まれのわたしの世代は、子どものころは家族でデパートに行くのがレジャーの一つでした。当時、デパートは和洋中なんでも揃えた大食堂を備え、屋上には遊園地がありました。実はわたし自身は大食堂でお子様ランチを食べた記憶があいまいです。ご飯に旗が刺さっていて、その旗が日の丸ではなくデパートのマークだった記憶ははっきりあるので、おそらく食べたのだと思います。しかし、それがハンバーグだったのか、エビフライだったのか、チキンライスだったのか、何を食べたのかの記憶がまったくありません。デパートに行ったときは、やっぱりミニカーを買ってもらっていたことを覚えています。ここ松坂屋ファミリーレストランは、そんなかつてのデパートの過ごし方を思い出させてくれる風情を残しています。悠平はきょうのことを覚えていてくれるでしょうか。

 さて、松坂屋を後に地下鉄で浅草に向かい、東武線に乗り換えて東向島で下車。東武鉄道の博物館に行きました。電車大好きの悠平も思い切り楽しめたようです。嫌いではないわたしも、なかなか楽しめました。ただ、入ってすぐがミュージアムショップなのには困りました。埼玉の鉄道博物館でもそうでしたが、悠平は好みのおもちゃを見つけると展示そっちのけで売り場から離れようとしません。デパートのおもちゃ売り場などでは、「きょうはダメ」と言えば、多少は泣いても間もなく収まるのですが、鉄道の博物館ではなぜか強硬です。やはり特別な場所なのでしょうか。きょうは東武電車のチョロQを手にパニック。「お買い物は後だよ」と言っても泣き止みません。仕方なく、買い物を先にすることにして、悠平こだわりのチョロQと博物館オリジナルの巾着袋、スペーシアのハンドタオルを買いました。巾着袋やタオルは悠平が幼稚園に通い始めたら役に立つだろうと思います。
 東武博物館はホームページに詳しい紹介があります。
 http://www.tobu.co.jp/museum/index.html
 浅草〜東向島の電車やホームからも建設中の東京スカイツリーが間近に見えます。鉄道好きなら楽しめる施設です。