美容院から理容店へ

 妻(yuheimama)です。悠平はこれまで、母が通っていた美容院でカットしてもらっていたのですが、先日、理容店デビューを果たしました。悠平は髪が硬く、量が多いため、以前からハサミ中心でカットしていた美容院で「床屋だとバリカンで、バーッと刈ってもらって早く終わるかもしれませんよ」言われていました。

 そうは言っても、習慣へのこだわりが強い悠平のこと、すんなりお店を変えられるか心配でした。たまたま、予約を入れたいタイミングと美容院の休みが重なったので、「悠君、美容院には行けるようになったから、今度は床屋さんにも行ってみない?」と、ステップアップを意識させる言い方で、理容店へ行くことを提案してみました。悠平も髪が伸びてきたことを自覚していたからか、「うん、行ってみる」と意外とすんなり応じました。

 理容店の候補は2つ。1つはいわゆる1000円カットのお店で、予約なしで行き、悠平が黙ってじっとしていれば短時間でカットしてくれそうです。もう1つは予約をしていく理容店です。悠平に希望を聞くと、予約が取れればそちらへ、取れなかったら予約なしのお店でと、柔軟な返答が返ってきました。

 近隣に幾つかある理容店の中から母が選んだのは、訪問理容を手掛けているお店です。訪問理容では高齢の方や障害のある方のカット等も手掛けているので、障害理解があると期待してのことです。早速、電話をして悠平に障害があることを話すと、「必要な配慮はありますか?」と聞いてくださいました。この時点で、母、感激です。悠平の状態として、これまでは母が通っていた美容院に行っていたこと、基本的な会話はできること、時間が長くかかると「あと何分で終わりますか」などと言い出すことがあること、初めての体験を不安がる場合があり、美容院ではシャンプー台でのシャンプーができなかったこと、今回はシャンプーにチャレンジさせたいことを伝えました。

 当日、「緊張する」と言いながら入店した悠平。母もドキドキしながら見守りました。懸案だったシャンプーの前には、なんと、事前にシャンプーの様子をスマホ動画で見せてくださいました。椅子を倒す最中に「怖い!」と声を上げた悠平に、「大丈夫だよ」と優しく声がけし、目元にタオルをかけた後も、「これからシャワーをかけるよ」「シャンプーを泡立てるよ」「シャワーで流すよ」とステップごとに声をかけ、不安を和らげてくださいました。すっかりリラックスした悠平、初めてのシャンプーがよほど気持ちよかったのか、「気持ちいいです!」「またここに来ようかな」とシャンプーの最中に発言。母、ウルウルしてしまいました。最後は自分で支払いを済ませると、「お金の支払い、自分でできるんだね」とほめていただき、ご満悦。担当者から母にも「全く問題なく、大丈夫でしたね」と言っていただきました。何度も「ありがとうございました」と感謝して、お店を後にしました。

 帰宅後、悠平に「お母さんの美容院は卒業して、これからは悠君の床屋さんに行こう」と言ってみると、「そうだね!」と明るい返事。これまで通った美容院では、障害のある子を受け入れるのは初めてだったとのことで、お互いに緊張しながらのカットで始まりましたが、会話を楽しんだり、お金の支払いや、どのように切ってほしいのかを自分で伝える体験をさせていただき感謝しています。新しい理容店では、「合理的配慮」によって本人も付き添い家族も快適にサービスを受けられることを実感しました。バリアフリーという言葉がありますが、地域でのこうした一つ一つの取り組みがこの社会の在りようを作っているんだということを、改めて気づかせてくれた理容店体験でした。