STでの新たな取り組み「バースデー・フォト」

妻(yuheimama)です。先日、ST(言語)療育の課題として継続して取り組んでいる写真日記で、悠平はyuheipapaと世田谷区内の公園に行き、ミニSLに乗った時のことを題材に選びました(写真日記については「今年度の療育」を参照ください)。悠平自身は覚えていなかったようですが、1歳の時に私が抱っこして同じミニSLに乗ったことがあったので、日記の最後にその写真も添えて「1さいのときにも のったね」とのコメントを付けました。それを療育の時間にSTの先生と一緒に読んだ悠平は、小さなときの自分の姿にピンと来ていないようでした。その様子を見た先生から「小さなときの自分のイメージが写真から伝わっていないのかもしれない」という評価がありました。そこで、「悠平君の誕生から今までの、誕生日の写真を並べたシートを作ってきてください」と言われました。

このシートの目的は自分の成長を振り返り、時系列での自己イメージを持つことにあります。懐かしい写真データを探しながら、生後20分にyuheipapaが撮影したわが家にとっては貴重な悠平の誕生写真を皮切りに、1歳、2歳…8歳までの誕生日写真、計9枚を並べたシートを作成しました。6歳以降の3年分には、写真の横に、その日のことを思い出しやすいように誕生日プレゼントの小さな写真も添えました。9枚に及ぶ誕生日写真を順番に確認しながら、その時、どこに住んでいたのかといった情報も写真の横にメモしていきました。この作業によって、時系列で、幼少期の姿が自分のものであるという意識をだいぶ持てるようになったようです。

さらに時系列に関しては、過去4回の療育時間に「起承転結のある、4枚の絵の配列」という課題に取り組みました。これは、4枚のバラバラのカードにそれぞれ絵がかいてあり、それらを正しい順番に並べてストーリーを作るという課題です。例えば、1)男の子がお母さんとでかける、2)2人がスーパーで買い物をする、3)2人が帰宅する、4)料理を作る、といった具合です。悠平は初めの2回は正しく並べられませんでしたが、3回目、4回目は絵カードを時系列で正しく並べ、それを見ながらストーリーを作って話すことができるようになりました。

なぜ時系列で考えることが大切なのかというと、「これをすると、次にこうなる」と、自分の頭で組み立てられるようになると、パニックが減るというのです。パニックの原因として考えられることの一つに、先行きの分からない不安が挙げられます。その不安を軽減するために、これまで視覚スケジュールなどで見通しを持たせることを実践し、効果をあげてきました。視覚スケジュールや手順書を繰り返し使って見通しを持たせることを習慣にした上で、時系列で考えるトレーニングをしていくと、段々と自分で先行きを考え、組み立てられるようになり、その結果、パニックを軽減させられるというのです。素晴らしい! 

以前に自閉症当事者の方が書いた本で「自分の記憶は無数の点の集まりで、時間の経過に沿って結びついた線になっていない(=時系列になっていない)」という趣旨のことが書かれているのを読んだことがあります。時系列を考えさせる課題は、療育によって点を線で結んでいく試みなのです。

STの療育を始めたころは、言語の発達やコニュニケーション力を伸ばすのが目的だと単純に考えていました。今では専門家ならではの様々なアプローチに感心するとともに、ST療育は言語力の向上だけでなく、言語という切り口を通して生活力の向上に働きかけているのだと勉強させられます。ST療育はニーズが多く、なかなか希望通りの日時に予約が取れないのが悩みの種ですが、何とかやりくりをしながら貴重な療育の機会を最大限生かしていきたいと思っています。