ついにハードルを越えました~悠平の心配事・完結編

 妻(yuheimama)です。先日、夜に突然発熱してしまいました。生活習慣へのこだわりが強く、スクールバスのバス停送迎は、母でなければ対応できない悠平は焦りました。前回、私が発熱した5月、次に母の具合が悪くなったときには父(yuheipapa)とバス停に行くと念書にサインしていたからです(詳しくは「悠平の心配事」を参照ください)。

 翌朝、体調不良ながら朝食の用意をしていた母の側に来て、「大丈夫?」と心配(母の体調ではなく、自分の送迎を心配)。「つらいからお父さんと行ってくれる?」と聞くと、「イヤ~」と顔をしかめています。その後、yuheipapaと悠平の攻防が始まりました。

yuheipapa「お父さんと行こう」

悠平「イヤ!」
yuheipapa (念書を見せて)「悠君、自分でサインしたでしょ」

悠平「…」

yuheipapa「お母さんが死んじゃってもいいの?」

悠平「ダメーーー!!」

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5月にサインした念書

 どうなることかと思いましたが、食卓に着くと、悠平は自分から「お父さんと一緒に行くよ」と言い出しました。「ありがとう~、助かるよ~」と母。yuheipapaと悠平を見送り、朝食の片づけをした後、スマホ片手に横になりました。バス停で一緒のママ友たちにLINEで連絡を入れたところ、皆さんから「悠平君、落ち着いてるよ。お大事に」と次々にコメントをいただきました。

 帰宅後、「悠君がお父さんと行ってくれたから、お母さん、その間に休めてとても助かったよ。ありがとう」と伝えると、本人も「頑張った!」と自信がついたよう。「もうすぐ卒業だしね。もうすぐ中学だしね。中学生になったら一人通学するよ」と意欲を見せてくれました。

 その夜、入浴中の悠平は大きな声で自問自答をしていました。「お父さんとバス停に行ったのはなぜでしょう? 1.これからお父さんと行くから 2.お母さんが具合が悪かったから。答えは1。ブブー、残念。2番でした」。思わず笑ってしまいましたが、同時に、悠平は自分の中で一生懸命、折り合いをつけているんだろうなぁと感じました。

 頑張った、悠平! もう、体温計の電子音に反応して、「何度何分?」って、わざわざトイレのドアを開けてまで気にしなくて大丈夫だよ。でもまた、お母さんの具合が悪くなったらよろしくね。 

 小学校卒業前に大きなハードルを乗り越えました!

学習に生きる鉄道愛

 妻(yuheimama)です。悠平の鉄道好きには、たびたび触れてきました。今回は、この鉄道愛が学習面で役に立ったエピソードを2つ紹介します。

 1つ目です。先日、方角と基礎的な地図の読み方を学習していたときのこと。地図上で東西南北を間違えなく把握するにはどのように教えたらよいか考えました。まずは縦のラインが南北、横のラインが東西であることを伝え、東京の路線図を広げました。「地下鉄の南北線は縦に走ってる?横に走ってる?」と尋ねると、「縦!」と一発正解。「じゃあ、東西線は?」ーー「横!」とこちらも正解。「南北は縦、東西は横だね」と念押しすると、悠平は次々と他地域の南北線と東西線を確認していきました。すべて縦横の法則が当てはまっていて、納得。以来、東と西が地図上で右か左か時々迷うことはあっても、東西と南北を間違えることはありません。Good job!

 2つ目です。悠平はテレビの鉄道旅番組が好きです。旅番組をきっかけに、さまざまな地域に興味を持ってくれればと、以前からリビングに世界地図を張っていました。が、これまでは国内の鉄道以外あまり興味を示しませんでした。ところが先日、新聞のテレビ欄でアフリカの鉄道旅の番組を見つけて、自ら録画予約。繰り返し見るようになりました。舞台はザンビアとタンザニア。さっそく、壁の世界地図を指さし「ザンビアはここ、タンザニアはこっちだよ」と教えました。紙上の地図とテレビの映像が悠平の中でつながり、瞳がキラキラ! 

学習ポスター 世界地図

学習ポスター 世界地図

 

  その後は、地図の周りに描かれた国旗探し競争です。大人げなく、母が2勝。それでも悠平は楽しそうでした。悠平は別の機会にツタンカーメンのマスクの写真も見たことがあったので、「ツタンカーメンは大昔のエジプトの王様。エジプトはここだよ」と教えました。すると、「え~、エジプトもアフリカにあるの?」と悠平。あら、知らなかったのねと思いながら「そうだよ」と会話が発展しました。

 オリンピック・パラリンピックを前に、学校ではさまざまな国のことを調べましょうといった学習が行われていることと思います。悠平がオリパラに感心を持つか分かりませんが、鉄道愛は少しずつ悠平の視野を広げてくれているように思います。

僕は哺乳類

 妻(yuheimama)です。先日、国語のプリントで、ペンギンとアザラシについての説明文に取り組みました。ペンギンは鳥類で日本の海には住んでいない、アザラシは哺乳類で日本の海に住んでいるものもいるといった内容でした。哺乳類という言葉は初出だろうと思い、「ゆう君、哺乳類って聞いたことある?」と尋ねると、予想通り「ない」との答えが返ってきました。そこで「鳥類は卵から生まれるけど、哺乳類はお母さんから生まれるんだよ」と説明すると、「じゃあ、僕は哺乳類!」と即座に笑顔をみせました。思いがけない悠平の言葉に、こちらも「そうだね~!」と笑いつつ、一つのことを覚えてもほかのことに応用するのが困難だと言われる自閉症の悠平が、しっかり応用できていたことにちょっと感動してしまいました。

 後日、夕食時に魚の煮つけを食べていたときのこと。「ゆう君、ペンギンは鳥類、アザラシは哺乳類だったよね。魚は魚類って言うんだよ。魚っていう漢字、「ぎょ」とも読むでしょ」と、話しかけてみました。「ぎょ」の響きが面白かったのか、「魚類!!」と言って、悠平、笑い出しました。しばらく笑った後、「魚は何でも食べられるの?」と質問されました。うーん、どうなんだろう。全ての魚が食べられるかは分かりません。ちょっと考えてから「お母さんにも分からないけど、例えば、フグは食べられる部分と、毒があって食べられない部分があるよ」などと説明してみました。悠平は「ふーん。じゃあ、ハリセンボンは食べられる?」――「えっ!?」。そんなことは考えたこともありません。「食べられるかもしれないけど、おいしいかどうかは分からないなぁ」と、苦し紛れに答えました。

 悠平と話していると、時々、思いもよらぬ反応や質問が飛び出します。それが自閉的な発想なのか、本人の個性なのかは分かりませんが、それはどちらでもいいこと。ありのままの悠平を受け止めることで、加齢とともに硬直していく私の頭が柔らかくなればいいなぁと思っています!?

やっぱりお金は難しい その2

 妻(yuheimama)です。夏休みに、値段に合わせて必要な金額を考える課題で躓いた悠平(「やっぱりお金は難しい」を参照ください)。目に見えない貨幣価値を教えるにはどうしたらいいだろうかと考えあぐねました。何冊かの本にも目を通しましたが、悠平にフィットしそうな教え方が見つからず、困った、困った。「値段が高い」と言っても、悠平にとっての「高さ」は、背の高さや建物の高さ。「値段が安い」と言っても、「安い」の意味が分からないだろうなぁと、またまた困った。あれやこれやと考えた挙句、とてもシンプルな教え方にたどり着きました。

 

★ねだんより 小さな数のお金→買えない
★ねだんと  同じ数のお金 →買える
★ねだんより 大きな数のお金→買える、おつりがもらえる

 

 お金の問題に取り組む前に、この3点を確認しておくと、正解できるようになりました。ただし、慣れてきたかなぁと思って、3点を確認しないと、また当てずっぽうに戻って不正解です。量をこなして自分で判断できるようになるまで長丁場になりそうです。
 問題プリントは、悠平が実際の硬貨や紙幣と結びつけて判断できるようにお金のイラストを切り貼りして作っています。これが結構、手間暇がかかる上に肩が凝る! インターネット上では、無料でダウンロードできる子供向けのドリルがありますが、健常児向けの内容なので、悠平の認知特性にはなかなか合いません。あぁ、これが本当の特別支援教育。

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 先日、悠平とコンビニに行った際、レジで「298円です」と言われました。悠平に100円玉3枚を見せて、「これで買える?」と尋ねると、自信満々で「買えるよ!」と返答。レジのお姉さんもニッコリ笑ってくれ、母の努力も少しは報われたかなぁと思いました。
 継続は力なり――一山超えるたびに同じことを言っているような気がします!?

夏休み2018 その3(完)

 yuheipapaです。悠平と過ごした夏休みの振り返りの3回目。これでひとまず完結です。

▼百裂拳の駅
 東京の品川から神奈川県・三浦半島へ走る京浜急行電鉄がことし創立120年とのことで、劇画「北斗の拳」とタイアップしたスタンプラリーやラッピングトレイン、イベント列車の運行などを7月30日から9月17日まで実施しました。中でも「ここまでやるのか」と少なからず驚いたのが「駅名看板の特別装飾」です。
 対象の駅は三つ。それぞれ劇画のキャラクターに合わせて駅名をアレンジ。キャラクターのイラストが付きました。驚いたのは京急蒲田(かまた)駅(東京都大田区)の「京急かぁまたたたたーっ駅」です。描かれたイラストは、北斗百裂拳を繰り出している京急の制服姿のケンシロウ。「北斗の拳」と言えばこれに決まり、というシーンでしょう。京急蒲田駅は入口が複数ある大きな駅ですが、この看板はJR蒲田駅へつながる商店街に近い、同駅のメインと呼んでいい入口にありました。

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 横浜市港南区の上大岡(かみおおおか)駅は、ラオウのイラストが入った「上ラオウ岡駅」になり、横須賀市の「県立大学駅」は「北斗の拳立大学駅」となって、イラストは制服姿のケンシロウでした。

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 北斗の拳は1983年に少年ジャンプで連載開始。ちょうどわたしが就職した年でした。翌84年にはテレビでアニメの放送が始まっています。2003年に登場したパチスロ機は、ビッグボーナスを引き当てるとケンシロウとラオウの対決画面に移り、ケンシロウが勝ち続ける限りコインが増え続けるというゲーム性が人気を呼びました。
 実は悠平がケンシロウやラオウに出会ったのはこのパチスロ機を通じてです。と言ってもパチンコ店の本物ではなく、温泉ホテルのゲームコーナーでした。もう随分前のことです。湯上りについ、わたしが手を出したのですが、幼児期は回転する物体が大好きだった悠平は、パチスロ機の回転ドラムに興味を示したのか「ぼくも!」と叫んでチャレンジ。以来、ゲームコーナーで見かけるとつい100円、200円と遊んで、ビッグボーナスのケンシロウとラオウの対決シーンも目にしたことがあります。
 そういう「ケンシロウ体験」があるので、京急のホームページで「京急かぁまたたたたーっ駅」を知った時には、悠平も即座に「見に行こう!」と同意しました。
 それにしても大胆な看板。行き交う利用客も、看板に気付くと一様にスマホや携帯電話を取り出して写真を撮っていました。

▼まぐろきっぷで小旅行
 もう一つ、京浜急行の話題です。乗車券と食事、レジャーがセットになった「みさきまぐろきっぷ」という企画商品があります。
 ※京浜急行電鉄「みさきまぐろきっぷ」
 http://www.keikyu.co.jp/information/otoku/otoku_maguro/index.html
 そろそろ夏休みも終盤という週末に、悠平と二人で利用してみました。実は「京急かぁまたたたたーっ駅」の看板を見た後、どうせなら「上ラオウ岡駅」と「北斗の拳立大学駅」も見ようと悠平と相談。それならついでに終点まで行って、昼ごはんにマグロを食べようということになりました。
 利用してみての感想ですが、うまく使えば1日たっぷり楽しめそうです。気付いたことを書きとめておきます。

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 ・途中下車が可能
 京急線の電車は出発駅(きっぷ購入駅)と三崎口駅の間の往復が利用できますが、ほかに途中下車も何度でも可能です(ただし後戻りはできません)。わたしと悠平は横浜駅からスタート。三崎口までの間に「上ラオウ岡駅」(上大岡駅)と「北斗の拳立大学駅」(県立大学駅)で途中下車して、駅の外に出て駅名看板の写真を撮ったりしました。これだけでも利便性の面で好印象です。

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 ・楽しいけど暑いオープントップバス
 「三浦・三崎おもひで券」の使途はレジャーやおみやげなど、バリエーションはけっこう豊富です。出発前に京急のホームページを見ながら「悠くん、どれがいい?」と相談したところ、迷わずにオープントップバスを指定。わたしもこのタイプのバスには乗ったことがなく、試してみましたが、なかなか楽しめました。
 バスの出発の1時間前に三崎口に着いたので、座席は2階の最前列に。外観の塗装が京急の特急電車をイメージした色使いである点も悠平の気を引いたようです。城ヶ島までの30分ほどのドライブでしたが、路線バスとは全く違う道をゆっくり走り、三浦半島の景色も遠くの富士山も楽しめました。目の前に座った女性ガイドさんが話し上手で楽しめました。
 難点は直射日光を浴びること。日差しの強い日で、一応はバスの車内ということなのでしょうか、日傘は使用不可。帽子を持参していなかったお客さんは大変だったと思います。

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 ・子どもは別メニュー
 食事はこの企画切符のメインです。クーポン(「まぐろまんぷく券」)が使える店の混雑具合も、サイトでほぼリアルタイムで表示されます。入った店では、クーポンで注文できるメニューが4種類用意されていました。それは事前にサイトで知っていたのですが、ちょっと予想外というか予期していなかったのは、子どもは別メニューになること。出発前にサイトを見ながら「このお店なら、お父さんはこの海鮮丼。悠くんはどれにする?」などと悠平と相談していました。要は、大人と同じものを注文するなら差額の支払いが必要で、そうでなければ子どもは安い価格帯のメニューから選ぶ仕組み。それならそうと、サイトにひと言、分かりやすく説明がほしいと感じました。

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 幸い悠平は、差額料金なしのマグロ漬け丼を「おいしいね」と言いながら完食。幼児期なら、期待していたものが食べられないとほぼ確実にパニックを起こしていました。こんなところにも成長を感じます。ちなみにわたしは予定通り、海鮮丼をいただきました。

 食事の後は海南神社にお参りして、おみやげはマグロの頭部の俗に「脳天」と呼ばれる部位の冷凍を買いました。解凍は、まず塩水で洗い、キッチンタオルとラップで巻いて冷蔵庫へ。翌週の週末、店で教わった通りに自宅でやってみたら、まるでどこかの高級店じゃないかと思えるぐらいおいしい刺身になりました。

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▼夜の大仏
 8月最後の週末は夜の鎌倉を悠平と2人で訪ねました。夏休みも終了間近ながら、昼間は暑いし外出をどうしようか、と思いながら調べていて、「かまくら長谷の灯かり」というイベントを知りました。神奈川県鎌倉市の中で、鎌倉大仏や長谷観音で知られる長谷・極楽寺地区を舞台に、八つの寺院・施設が一斉にライトアップするイベントで、今年で3回目とのことでした。
 ※「かまくら長谷の灯かり」 http://www.hasenoakari.jp/
 大仏のライトアップも面白いなと思い、悠平を誘ってみましたが、意外にも拒否。昨年の様子の画像などもネットで調べて見せたのですが「行かない」の一点張り。よくよく聞いてみると「夜は暗くて怖い」とのこと。思わず笑ってしまいました。「お父さんが一緒だから大丈夫だよ」などなど、いろいろ説得を重ねるうち、今度は一転して「行く」と上機嫌に。どう話したのが良かったのか、何がきっかけで一転したのか、今もよく分かりません。

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 まだ日のあるうちに江ノ島に着き、夕食を済ませて外に出ると、夕日に富士山が映えていました。この辺り、よく晴れた冬の朝から午前中は、きれいな富士山を見ることができます。江ノ電に乗って長谷に着いた頃には、すっかり日も暮れていました。イベントは夜8時半で終了なので、とても8か所すべてを回ることはできません。せいぜい2カ所だろうと思い、まず鎌倉大仏(高徳院)、次に長谷観音を回りました。

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 駅から高徳院に向かう道は人もまばらなように感じましたが、高徳院に着いてみると結構な人出でした。昼間と同じように拝観券を買って入場。ライトアップされた大仏の顔つきは自然光の下で見るのとは違って、かなり険しく感じました。悠平はもともと鎌倉の大仏はお気に入りの場所の一つなので、真っ暗な中でも怖がることもなく、夜の大仏を満喫したようでした。

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 長谷観音では発光ダイオードが仕込まれた提灯を入口で手渡されました。光の色が一定の時間で青や紫、緑、白などと変わっていきます。すべて同期しているようで、入場客が下げている提灯の光の色が一斉に変わる様は、何とも幻想的でした。

 こうして悠平12歳、小学生最後の夏休みは終わりました。一緒にあちこち出掛けていて、そのときはそうと気付きませんでしたが、今振り返ればパニックを起こしたことは一度もなかったように思います。本当に成長しました。

 

※参考

yuheipapa.hatenablog.com

yuheipapa.hatenablog.com

夏休み2018 その2

 yuheipapaです。悠平と過ごした夏休みの振り返りの続きです。

▼凛とした空気、早池峰神社
 ことしも悠平、わたしと妻(yuheimama)の3人で、妻の両親、つまり悠平の祖父母の墓参に岩手に行きました。花巻市の「るんびにい美術館」を訪ねたことは、既にyuheimamaがこのブログでお知らせしました。

yuheipapa.hatenablog.com

 花巻市では旧大迫(おおはさま)町の早池峰神社にも足を延ばしました。北上山地の最高峰で百名山の一つ、早池峰山の登山口に当たり、山岳信仰と早池峰神楽で知られる山あいの古社です。旧大迫町が設置した説明板によると、本殿の築造は1612年とのこと。南部藩の手厚い保護を受けていたようです。
 悠平と一緒に各地の神社を巡っていますが、この神社の境内は、ほかのどこよりも凛とした空気が張り詰めているのを肌で感じました。身が引き締まる思いで参拝するとともに、昔の人たちの自然への信仰心に思いをはせました。
 社務所は無人でしたが、案内にあった通り、御朱印は近くの宿坊で書き置きをいただきました。

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 花巻界隈は「わんこそば」で知られるソバどころです。昼食は、かねて気になっていた地元発祥の和食レストランチェーンでおそばをいただきました。メニューには、たっぷりの冷たいつゆとカリカリの天ぷらが大好きな悠平のために用意されたかのような「冷やかけ天ぷらそば」があり、迷わず注文。東京では冷たいそばと天ぷらの組み合わせは、「ざるそば」「もりそば」になってしまい、つゆたっぷりの丼タイプは冷やしタヌキかキツネぐらいしか見かけません。悠平は「おいしいね」とつゆまで完食でした。わたしは天ざるをいただきました。

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▼1000段の石段~山形・立石寺へ
 岩手への旅行は墓参のほかにもう一つ、目的がありました。山形県山形市にある「山寺」こと立石寺(りっしゃくじ)参拝です。
 東北新幹線で岩手に別れを告げ、仙台で下車。山形に向かう在来線のローカル線、仙山線に乗り換えて、山形県境に近い作並温泉に一泊しました。翌朝、再び仙山線の電車に乗って「山寺駅」で降りれば、ホームからも見えるのが立石寺です。
 ここは松尾芭蕉が「奥の細道」の旅の途中に寄り、「閑(しずか)さや岩にしみ入る蝉の声」の俳句を詠んだ場所として知られる天台宗の古刹です。山中を1000段余りの石段を登った急峻な斜面を切り開いて、奥の院を始めとしていくつもの堂宇が立ち並んでいます。特に五大堂からの眺めのよさが有名です。
 わたしと悠平は関西在住当時、山の中にある寺にもあちこち行っており、悠平は小学校に入る前、880段の石段も登ったことがあります。1000段の石段にわたしと悠平はさほどの心配はありませんでしたが、暑さもあるのでyuheimamaは無理をしないことにして、わたしと悠平が参拝を終えてに降りてくるころに、麓で待ち合わせることにしました。

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 さて、わたしと悠平は麓にある根本中堂(本堂)にお参りした後、石段の登山道へ。途中には芭蕉と門人の曽良の像がありました。日差しが強い日でしたが、登山道は木立の陰になっており、清々しい空気に満ちていました。悠平に「気持ちいいね」と声をかけながら、石段を登り始めましたが、直に汗が吹き出し息も途切れがちに。こまめに立ち止まって休息を入れ、水分補給をしながらゆっくりと時間を掛けて登りました。やがて山上の境内の入り口である仁王門が見え、斜面に立ち並ぶお堂の一つ一つにお参りし、御朱印をいただきながら無事に奥の院に着きました。普通の大人の足で、登山道入り口から奥の院まで20~30分ぐらいとのことですが、わたしと悠平は40分ぐらいのペースだったでしょうか。

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 絶景で有名な五大堂へは、奥の院から少し下ったところにある開山堂と納経堂の脇の狭い道を登ってすぐです。眼下に仙山線の線路と山寺駅、門前の街並みを望むパノラマは、わたしも悠平も見飽きませんでした。

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 無事に麓に降りて、作並温泉の宿をゆっくり出てきたyuheimamaと合流。yuheimamaも根本中堂にはお参りできました。昼食は3人で、門前町のおそば屋さんに。わたしは山形名物の板そばに天ぷら付きを頼みました。板そばは、大量のそばがせいろではなく、板のような浅い木の箱に盛られています。かなりの量でしたが、箸が止まらないおいしさで、難なく食べ切りました。悠平が食べたのは冷やし肉そば。これも山形のご当地そばのようで、具は煮た鶏肉でした。写真に写っているエビ天は、わたしから。悠平はここでもつゆまで完食でした。

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 帰りの電車まで時間があったので、門前のみやげもの屋さんで山形名産の洋ナシ、ラ・フランスのジュースと、これも山形名産の玉こんにゃくをいただきました。ちょっと妙な取り合わせでしたが、山形の味を満喫しました。悠平とyuheimamaは、それぞれラ・フランスのソフトクリームとサクランボのソフトクリームでした。帰路は山形駅に出て山形新幹線に。いつもは東北新幹線で往復する岩手への墓参ですが、今回は仙山線や山形新幹線に初めて乗ることができて、悠平は東北の旅を満喫したようです。

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▼平和を考える季節
 わたしはマスメディア企業に勤め、報道の仕事に従事して三十年以上になります。8月は新聞もテレビも、6日と9日の広島、長崎の原爆の日、15日の終戦の日に関連した記事や番組が増えることもあって、この時期はいつのころからか、個人的にも戦争と平和について考えながら過ごすようになりました。そんな中、悠平とのお出かけ先を探していて、東京都調布市の調布飛行場に隣接する「武蔵野の森公園」に、旧日本陸軍の戦闘機を米軍の空襲から守るために作られた「掩体壕」が保存されているのを知り、悠平と一緒に訪ねてみました。
 調布飛行場は陸軍航空隊の基地として建設されました。掩体壕に掲示されている説明によると、1941年(昭和16年)4月に完成。滑走路は南北1000メートル、東西700メートルの2本。掩体壕は1944年ごろから、コンクリート製の約30基、土塁の約30基が作られ、うちコンクリート製の2基が保存されています。
 配属されたのは戦闘機「飛燕(ひえん)」を中心とする飛行部隊。戦争末期には米軍のB29爆撃機を迎え撃ちますが性能の差から戦果は上がらず、最後はB29に体当たりしました。飛行場では特攻隊の訓練も行われたとのことです。

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 保存されている掩体壕の傍らには、掩体壕とその中で待機する飛燕の様子を再現したブロンズ像が置かれています。公園の中の高台からは、調布飛行場の全景を望むことができました。今は平和な光景が広がっていますが、掩体壕は、70年以上も前、確かにここで戦争があったことを物語っています。

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 悠平はと言えば、飛行場の駐機場に小型機がずらりと並んだ光景が気に入ったようでした。掩体壕や飛行場の滑走路を見ながら、戦争について悠平にいろいろ話しましたが、どこまで理解できたかは分かりません。抽象的で難しすぎて、ほとんど分からなかったのではないかと思います。それでも、親子3人が一緒に暮らし、日々、笑顔で過ごせることが何より。だれのことも、どの国のことも憎まずにいられる、それが平和のために大事なことなのだと、いつか悠平が思うようになってくれることを願っています。

夏休み2018 その1

 yuheipapaです。夏休みが終わりました。厳しい暑さの中で、ことしも悠平と一緒にあちこちに出掛けました。恒例の岩手への家族3人での墓参では、悠平が「平成最後の岩手旅行だね」と話すのを聞いて、大人びた話しぶりに少々驚きました。身長もぐんぐん伸びて160センチを超えているようで、もはや妻(yuheimama)は悠平と向き合って話すときは、仰ぎ見るようになっています。そう遠くないうちに、わたし(173センチ)にも並び、やがて追い越されるのではないでしょうか。
 一段と悠平の成長を感じたことしの夏休みの絵日記風の振り返りです。

▼プレ夏休み、箱根に家族で旅行
 7月の3連休を利用して家族3人で箱根に1泊旅行に行きました。実はわたしの勤務先で人事異動があり、それまでに比べてかなり静かな時間を過ごすことができる環境に変わりました。異動を機にわたし自身、少し骨休めをしようと思いました。
 箱根は小田急系列の乗り物がたくさんあって、「箱根フリーパス」を使えば、かなりお得に楽しめます。小田急ロマンスカー~箱根登山鉄道~ケーブルカー~ロープウエー~海賊船~バスと乗り継いで、主だった見どころを巡りました。
 箱根には以前、悠平が4歳の時に初めて家族で訪れましたが、なぜかこのときはロープウエーに乗るのを激しく嫌がり、ケーブルカーで引き返しました。3年前の夏には日帰りで悠平とわたしとで訪れたことがあり、このときは海賊船がお気に入りでした。今回、悠平は新型ロマンスカーGSE(70000形)がいちばんのお気に入りだったようです。

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 わたしは以前、日帰りの時に立ち寄った仙石原の長安寺が気に入っていました。曹洞宗のお寺で、境内の林の斜面にユニークな形相としぐさの羅漢の石像がいくつもあり、見飽きません。今回も再訪しました。以前訪ねた際、マンガ「天才バカボン」のバカボンのパパを思わせる石像があり、悠平と二人で笑いました。yuheimamaにも見せたいと思ったのですが、わたしも悠平も場所を思い出せず、探し当てることができなかったのが残念です。
 宿は露天風呂でヒグラシの鳴き声が聞こえる高原らしい立地でした。家族3人でのんびり一晩を過ごしました。

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▼成長に合わせてカメラも更新
 悠平は今まで、ニコンの子ども用カメラを使っていたのですが、成長に合わせてカメラも上級機種に変えることにしました。以前わたしが使っていたパナソニックのミラーレス一眼のルミックスを、悠平専用にしました。悠平は指の力が弱いこともあって、少し暗いところで撮った写真はどうしても手ぶれが目立っていました。今度のカメラは光をとらえる能力のISO感度も手動で設定することができるので、多少暗くても手ぶれが目立たない程度のシャッタースピードを設定することができます。
 悠平は自分ではそうした設定はできないので、わたしが操作するのですが、これまでパソコンでも何でも、わたしや妻の手の動きを目で見て覚えてきています。自閉児ならではの「目力(めぢから)」の強さです。たぶん、カメラもわたしの手元を見ているうちに興味を覚え、いずれは自分でできるようになるのではないかと期待しています。
 新しいカメラを手に7月最後の週末、東京都世田谷区の九品仏(くほんぶつ)浄真寺に行きました。大きな仏像が名前の通り9体あることで知られます。境内が広く、秋は紅葉がきれいなので、ほぼ毎年悠平と一緒におまいりに来ています。真夏は初めてでしたが、青葉が目に鮮やかで、猛暑の中で木陰は涼やかでした。
 悠平は新しいカメラに興奮気味で、さかんにシャッターを押していました。以下の4枚の写真のうち3枚目、4枚目は悠平が撮影した浄真寺の境内の一コマです。

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▼ハスとサルスベリ
 悠平と一緒に寺社巡りをするようになってから、季節それぞれの花を楽しむようになりました。暑いながらも夏には夏の花の楽しみがあります。8月に入って間もなく、悠平と一緒に東京・上野の不忍池(しのばずのいけ)にハスの花を見に行きました。
 ハスは早朝に開花して午後には花を閉じてしまうことや、猛烈な暑さが続いていたことから午前中、早めに家を出ました。それでも午前10時ごろにはもう、うだるような暑さでした。不忍池のハスは江戸時代のころから庶民に親しまれていたとのことで、寛永寺の弁天堂を望む水面一面に咲いたピンクの花がきれいでした。

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 ほどほどで不忍池を切り上げて、次はJRとバスを乗り継ぎ東京都調布市の深大寺に向かいました。深大寺は門前にそば屋が立ち並んでいることで知られます。今まで何度も来ているのですが、実は門前のそば屋さんに入ったことはありませんでした。幼少時は偏食が激しかった悠平ですが、長じるにつれていろいろ食べられるようになりました。中でも、しょうゆを基本にした和の味覚が大好きなようです。今ではそばは好きな食べ物の一つになっています。この日は冷やしたぬきそばを、つゆまで残さず完食しました。

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 深大寺にお参りした後に向かったのは徒歩数分の神代植物公園。大きなサルスベリの木が何本もあり、赤っぽい花が満開でした。屋外で過ごしているだけで熱中症になりそうな暑い日でしたが、やはりサルスベリの花は炎天下の下でこそ映えるように思います。広い公園内には武蔵野の面影も濃く残っている林もあり、四季それぞれの楽しみ方ができそうです。

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 次回に続きます。