学び方は違っても、学ぶ力はあるのです――2012年を振り返って

 妻(yuheimama)です。「師走」とはよく言ったもので、本当に慌ただしかった12月が終わろうとしています。年の瀬にあたり、悠平と歩んだ1年を振り返りたいと思います。

 まず思い浮かぶのは、2月下旬から6月までの幼稚園登園拒否と、6月下旬の療育園への転園です。登園拒否をしていた時期には、幼稚園の関係者や医師、療育スタッフといった、多方面の方々にお世話になりました。退園の決め手となったのは、「就学に焦点を合わせる」という医師からの助言と、「問題行動は自己主張の表れ」であるという自閉症の息子さんを持つ大先輩からの助言でした(「決断――本日、幼稚園を退園しました」を参照ください)。その後、療育園に転園してからは、多少の波はあるものの専門スタッフに助けていただきながら今に至っています。

 幼稚園に行けるようになることが悠平のためと疑わなかった私たち夫婦は、実は幼稚園に行ってくれれば安心だと思うのは親の都合であって、悠平本意の考え方ではなかったことを思い知らされました。この経験は、悠平にとって何が一番大切なのかを考え直す大きなきっかけとなりました。私たち家族のために共に考え、お心遣いいただいた皆様に「感謝」の一言に尽きます。

 続いては、夏から秋にかけて行われた就学相談です。自閉症で知的障害のある悠平の場合、選択肢は特別支援学校か地域の小学校の特別支援学級です。悠平は幼稚園の登園拒否を経験しており、母子分離も困難な場合があるので、就学相談が始まる前は、人員配置が手厚く子供の特性に合わせた教育を専門とする特別支援学校を候補に考えていました。ところが体験入学をしてみると、学習内容が想像していた以上に初歩的で、気持ちが揺れはじめました。急遽、地域の支援学級も見学し、支援態勢を伺い、学校側からも「ぜひ来てください」と言っていただき、本当に迷いました。

 最終的には、学習は家庭でもフォローができるけれど、「社会との接点」としての学校に安定して通うためには特別支援学校の方が適しているだろうとの考えから特別支援学校を選択しました(「特別支援学校への進学を決めました」を参照ください)。就学という大きな環境の変化に悠平が適応できるよう、親も勉強しながらサポートしていきたいと思います。

 最後は療育についてです。身辺自立面では、日中のオムツがとれ、着替えに進歩が見られました。オムツから布パンツ&トイレへの移行には、悠平が大好きなディズニー・アニメ『カーズ』のパンツが大活躍してくれました(「思わずはきたくなるパンツ!?」を参照ください)。着替えでは、机上課題で手先のトレーニングを積んだ体験が実を結び、ボタンをとめるという難関を突破(「梅花での療育と家庭療育」「コチョコチョで感じるボディイメージ」を参照ください)。ほとんどの着替えを1人でできるようになりました。

 また、学習面ではひらがな・カタカナが読めるようになり、ひらがなは書く練習も始めています。数量の理解も進み、1から10までの数量を理解した後は、2桁の数量も理解しはじめています。悠平は「分かる」ことがうれしいようで、「学ぶ楽しさ」を感じ始めているようです。この気持ちは今後も大切にしてやりたいと思っています。

 特に学習面での家庭療育を通して私自身が発見したのは、自閉症の特性と知的障害のために、健常児(定型発達児)と同じ教え方では困難な学習も、本人の興味・関心に沿って、本人に合ったやり方を提供すれば、習得できるという事でした。将来的に、複雑な理論や抽象概念がどの程度理解できるようになるかは分かりませんが、少なくても日常生活に必要な「実学」は、生活との関わり方を意識しながら教え方を考えていけば学習可能なのではないかという手応えを感じています。

 悠平には――引いては知的障害児には、個人差はあるにせよ――健常児とは学び方が違っても、学ぶ能力はあるのだと思います。その異なった学び方というのが「特別支援教育」なのでしょう。私自身、自ら療育を手掛けることがなかったら、就学以後の特別支援教育を、言葉の上でしかとらえることができなかったかもしれませんが、悠平と共に学んできたおかげで、特別支援教育のスタートラインに立てたような気がしています。

 来年はいよいよ就学です。療育園での残り少ない日々を大切に過ごしながら、来年も「前向きにあきらめる子育て」(「たくさんの方々に助けていただきながら前向きに――北摂杉の子会2012年合同公開講座の報告」を参照ください)を模索していきたいと思います。

 最後になりましたが、今年1年、当ブログをご愛読いただきありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。よいお年をお迎えください。