連絡帳

 妻(yuheimama)です。先日、悠平の通う学校で個別面談がありました。面談では担任・副担任と母が、学校・家庭での悠平の様子を話しあって情報共有し、悠平が頑張っているところ、成長が見られるところ、今後の課題などをすり合わせました。面談で話題に上ったことの一つに連絡帳についてがあります。

  特別支援学校では、言葉の理解度がお子さんによって異なることもあり、登校する日には毎日、保護者と先生との間で連絡帳のやり取りをします。悠平は、ある程度、文章が読めるようになった小学校高学年あたりから、連絡帳に何が書かれているのか気にするようになりました。最近では母が連絡帳を記入すると、カバンにしまう前に必ず内容をチェック。家庭で頑張ったことや楽しかったことがあると、「連絡帳に書く!」とリクエストしてくることがあります。

  面談で分かったのは、学校で何かやらかしてしまった場合には、先生に「連絡帳には書かないでください」と懇願したり、頑張ってほめられた場合など、先生に「連絡帳に書く!」とリクエストしていること。それだけでも笑えるのですが、お友達が頑張った場面でも「連絡帳に書こう!」と先生に進言することがあるそうなのです。先生は「連絡帳に書く場合もあるけど、ほかにもお家の人に連絡しなくてはならないことがあれば、そっちを書くよ」と対応してくださっているそうで、母の笑いは恥ずかしさで冷や汗に変わりそうでした。

  自閉症には対人関係の障害があると言われ、悠平に限らず、自閉症児者は相手がどう思うかを想像したり、相手にどうみられるかを意識することに困難を抱えています。そう考えると、連絡帳にどう書かれるかを気にかけるというのは、他者からのまなざしを意識するという意味で、「発達した」ということなのかもしれません。連絡帳に書いてもらうために何かするというのでは本末転倒なのですが、他者のまなざしという意識が悠平の中で育ち、将来、「支援する―される」という関係を越えた人間関係が少しでも豊かになってくれればなぁと母の心にちょっぴり欲が出てきました。

旅番組の投書

 妻(yuheimama)です。悠平はテレビの旅番組が大好きです。毎回、自ら録画をしながら視聴を続けている番組の一つに、NHK-BSの「にっぽん縦断こころ旅」があります。「とうちゃこ」のフレーズでご存知の方もいらっしゃるかもしれません。この番組では、俳優の火野正平さんが視聴者から投書で寄せられた思い出の場所、「こころの風景」に自転車で向かい、今現在の風景の映像を届けてくださいます。10月の舞台は青森県と岩手県でした。

 岩手には悠平の祖父母のお墓があり、親戚もおり、悠平にとっては馴染みのある土地です。番組で岩手でのロケが予定され、「こころの風景」の手紙を募集していると知った悠平は、「とうちゃこに 手紙 書く」と一念発起。驚いた母が便箋を用意すると、黙々と文章を書き始めました。悠平の「こころの風景」は、岩手に行った際にいつも宿泊している温泉宿でした。

【引用】

「正平さん チャリオくん(自転車のこと) スタッフのみなさん いつもたのしく ろくがを みています。ぼくの こころのふうけいは いわてけん おうしゅうし 〇〇〇にある、△△△おんせんの おにわのおふろです。このおふろは いしでできていて、まるでプールみたいな、おふろです。(中略)正平さん、おふろに たどりつけたら、ぜひプールみたいな おふろで おくつろぎください」

 番組宛ての手紙には、我が家と岩手の関わり、悠平にはハンディがあること、支援なしで本人史上、最長の文章を書いたことなどを書き添え、投函しました。

 10月になり、いよいよ岩手県でのロケが放送されると分かると、悠平はドキドキ。放送当日は、母とソファに並んで座って観ましたが、手紙は不採用でした。番組を観ながら悠平は、悔しさに表情が硬くなっていましたが、「次も書く!」と決意を新たにしていました。

 残念な結果に終わりましたが、母としては、悠平が便箋1枚にぎっしりと自分の思いを書き連ねることができたことに感動。そして、これも悠平にとって一つの社会参加の形かなと、思ったりしました。

漢字学習とQOL

 妻(yuheimama)です。悠平の漢字学習が、なかなかユニークであると以前に紹介しました。

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 現在、家庭では小学2~3年生段階の漢字の読み書き練習を継続していて、学校では小学4年生段階の漢字の読み方も学習しています。読むことと書くことのどちらが難しいかといえば、書く方が難しいものです。将来的に悠平が自分で長文を書く機会は、そうそうないであろうことを考えると、書ける漢字を増やすより、読める漢字を増やした方が生活の質(クオリティ・オブ・ライフ=QOL)が向上します。そんなわけで、「書けるに越したことはないけど、読める方が優先」という学習方針です。

 鉄道好きの悠平は駅名や地名から漢字を覚え始めたので、音読みは比較的分かっていますが、訓読みが分からなかったり、送り仮名に過不足が生じることが多々あります。少しずつ繰り返し学習することで、読める漢字とできる範囲で書ける漢字を増やし、QOLの向上、生活の利便性を高めていってほしいと思います。

 

【おまけ】

「悠平らしい漢字練習」第2弾~悠平による漢字の用例を紹介します。

 

鉄道 乗:乗りかえ/終:終着えき

 

地名 勝:勝どき(東京都)/昭:昭しま(東京都)/所:所ざわ(埼玉県)/取:取手市(茨城県)/

   州:甲州街道(学校の近くの道路)

 

人名 所:所ジョージ/写:写楽

 

飲食 重:うな重/酒:ようめい酒

 

たぶん仮面ライダー 主:主役/者:うらぎり者

 

分類不能? 申:申しわけございません/助:「助けてーお父さーん」(実は絵本のセリフです)

 

→母の感想「自由だな~(笑)」

クリスマスプレゼントの前借り

 妻(yuheimama)です。8月下旬から2学期が始まり、悠平は日々、楽しそうに登校しています。9月に入ると、早くもクリスマスプレゼントを考えてソワソワ。「売り切れないうちに予約しなくちゃね」と話しかけてきました。

 今年のクリスマスプレゼントについては、6月の誕生日に仮面ライダー電王の変身ベルトをリクエストしていました。

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6月のリクエストを早々に手配してしまっては、クリスマスまでの半年間に気が変わったとき、変更がききません。そこで、「秋になってから決めよう」と話し、悠平も納得していました。そして迎えた9月。まだまだ暑いですが、暦の上では初秋。いよいよプレゼントを決める時期になりました。

 6月以降、予想通り悠平の気持ちは揺れ動き、最終的には、2017年から18年にかけて放送されていた仮面ライダービルドのスピンオフDVD「仮面ライダーグリス」(変身グッズ付き)に決定しました。悠平は2017年のクリスマスにビルドドライバー(変身ベルト)を手に入れていました。

 9月に入って注文すると早々に到着。クリスマスまで3カ月以上、待てるでしょうか。――悠平はDVDはともかく、手持ちの変身ベルトに装着できる変身グッズを開けたがりました。どうしたものかと話し合っている間に、10月にあるyuheipapaの誕生日に開けるという珍説まで飛び出し、最終的には、今、プレゼントを開けて、クリスマス当日にはプレゼントはなしでケーキだけにすることで決着がつきました。クリスマスプレゼントの前借りとでも言いましょうか。

 その日、新たな変身グッズを手にした悠平が「変身!」を連発したことは言うまでもありません。さらにDVDでは、変身シーンを何度も巻き戻しては入念にチェック。クリスマス前に飽きてしまうのではと少々、心配ではありますが、毎年さまざまな仮面ライダーグッズが売り出される中で、3年前に入手した変身ベルトを、結構長く愛用できていて、よかったな~と思っています。

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「七夕の願いごと」から1年

 妻(yuheimama)です。3週間の夏休みが早くも終盤を迎え、悠平の学校では週明けから2学期が始まります。今夏は夏休みらしいレジャーもなく、平日は自宅か放課後等デイサービスで過ごしました。日常生活が淡々と続いていくかと思われましたが、放デイからの提案で、悠平はまた一つ課題をクリアし、自信をつけることができました。

 昨年の七夕に「自分で電話をかけられますように」と願った悠平。初めは放デイの携帯を借りて練習し、その後、キッズ携帯を購入して、自分の電話を使えるようになりました。

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 これまでは、放デイからの帰宅時、悠平は送迎車から母に電話をし、母が自宅マンション近くに停車した送迎車まで迎えに出ていました。まずは、この母のお迎えをやめ、送迎車から降りた後、スタッフに付き添われて自宅玄関まで歩き、慣れたところで、車から玄関まで一人で帰ってくるようになりました。さらに帰宅後、悠平が放デイに「先ほど、到着しました」と電話で報告。これで帰宅は自己完結。残る課題は、朝となりました。

 夏休みなどの学校休業日には、朝、送迎車が迎えに来てくれます。これまでは車が自宅に近づくと、スタッフから母の携帯に電話が入り、車まで母が付き添っていました。この夏休み、放デイから提案していただいたのが、朝、スタッフが悠平に電話をし、悠平が一人で車に向かうことでした。生活習慣へのこだわりが強い悠平は、提案時、ちょっと嫌な顔をしたのですが、やってみたら「僕、できたよ!」と言わんばかりに嬉々とした表情を見せました。

 玄関から車まで1~2分の行程ですが、スモールステップで、安全に、確実に、達成することができました。提案し、支援にあたってくださった放デイの皆さんに感謝です! ついでながら、母は朝夕の送迎がなくなったことで、家での諸々の作業を中断されることがなくなり、「うわっ、楽!」と実感しています。

悠平らしい漢字練習

 妻(yuheimama)です。夏休み中、漢字の練習を継続しています。まず、新出漢字のなぞり書きをして、数回練習。次にその漢字を使った言葉を自分で考えます。例えば「安」であれば、安心、安いなど。慣れるにしたがって、悠平らしい言葉の例が飛び出してくるようになりました。 

 まず、地名です。居住する東京界隈をはじめとして、以前に住んできた関西圏や自分に馴染みのある地名類を書いています。

区:世田谷区

宮:じん宮(明治神宮のことだと思います)

根:根づ(東京下町の根津)

銀:銀かく寺

湖:びわ湖

界:しん世界(大阪の新世界!)

県:岩手県(祖父母のお墓、親戚がいます)

 

乗り物シリーズ

指:指定席

仕:でんしゃの仕事

庫:バスの車庫

港:フェリーの港

急:とっ急、急行、東急(私鉄です)

軽:軽トラック

運:運転手

客:客車

 

音楽

曲:新曲、名曲、ヒット曲

次:宮本浩次(ミュージシャンの名前です)

 

仮面ライダー

号:一号

悪:悪のかめんライダー

 

番外編

化:化けもの

血:血だらけ

 

 国語辞典を引いても、出てこないような例の数々に毎回、クスっと笑いを誘われています。好きなことをきっかけに、少しずつ、漢字を覚え、興味・関心を広げていってほしいと思います。

家族でアート鑑賞――Setagaya2020 by GAKU

 妻(yuheimama)です。新型コロナの影響で、悠平の通う特別支援学校では7月いっぱいが1学期、8月1日から23日までが夏休みとなりました。いつもなら、墓参や旅行、映画など、長期休みならではの過ごし方を満喫するところですが、今年は都県をまたぐ移動は控え、専ら自宅で過ごしています。そんな自粛生活の最中、久しぶりに家族3人で出掛け、リフレッシュする機会に恵まれました。地元の世田谷美術館区民ギャラリーで開催された自閉症のアーティスト、GAKUさんの展覧会です。 

 GAKUさんの展覧会を訪れるのは2度目。悠平に「前に世田谷美術館に観に行ったアート展、また行ってみる?」と尋ねると、「うん、行ってみるよ!」と二つ返事。以前に紹介した通り、悠平は岡本太郎先生を敬愛しているのですが(※1)、GAKUさんも岡本太郎作品に出合ってから、突然、絵を描きだしたとのこと。太郎先生の言葉を借りれば「言葉や概念では伝達不能なものを、象徴的に、直接に伝えることができるメディア」(※2)としての作品群が、彼らの心にストレートに響き、GAKUさんの作品もまた、悠平の心に響いたのかもしれません。

※1「太郎先生がやって来た」

※2出典:岡本太郎『自分の中に毒を持て』 

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 GAKUさんの作品の多くは抽象画ですが、とても愛らしい動物シリーズも人気です。全体に明るくはっきりした色使いが魅力で、観ているととてもハッピーな気分になれます。前回よりもラインが力強く、洗練されたように感じられ、自信が表れているのかな、と感じました。実はGAKUさん、世田谷美術館での展覧会に先立つ3月、ニューヨークでも個展を開催。バッグで有名なLeSportsac(レスポートサック)とのコラボも決定したとのこと! 現在19歳、さらなる活躍が期待されます(byGAKUホームページ:http://bygaku.com/)。

  GAKUさんのお父様は、以前にブックレビューした『療育なんかいらない!』の著者、佐藤典雅さんです。療育をやらないと宣言し、いろいろと試してGAKUさんの得意分野を見出し、その活動を驚くべき行動力でサポートし続けていらっしゃいます。あるがままの子どもを受け入れ、尊重し、全力サポートする姿勢に共感を覚えます。

  さて、悠平はお土産に作品をプリントしたTシャツをリクエスト。おまけとして作品をあしらったマグネット等もいただいて、大満足で帰宅しました。来年か再来年、悠平の背がさらに伸びて、Tシャツが着られなくなった暁には、そのTシャツ、母が着ようと決めています。

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